国内自動車メーカーの看板を掲げるディーラーが、全国で10,000店舗を超える日本。人口減少、自動車販売台数の低迷が続くなか、増えすぎた自動車ディーラーは、今後店舗数縮小へ向かうだろう。この先10年で消えていく店の特徴や、生き残るための方法を考えていく。
文/佐々木 亘、写真/トヨタ、Adobe Stock
■自動車は「買いに行く」ものに変わった
2000年代に入り、クルマの売り方は、営業マンが顧客のところへ出向き「クルマを売る」スタイルから、ユーザーがディーラーへ行って「クルマを買う」スタイルへ変化した。
売買・点検・各種商品の相談から身の上話まで、ユーザー宅で行われていたことが、全てディーラー店舗で行われており、ディーラーは高い技術力や接客力を持ち合わせることはもちろん、「居心地のいい場所」でなければならない。
お店の中が古い・汚いはもちろんダメ、スタッフの挨拶が無いなどももってのほか。ユーザーの行きたい場所になっていなければ、数字を伸ばせずに消えていく。
自動車ディーラーは、何百万円もする商品を買ってもらうにふさわしい場所(良いお店)になる必要がある。
■売るだけのディーラーは要らない
良いお店を作るのは急務。しかし、「売れているのだから、この店は良いお店」と考えてしまうのが、自動車ディーラーの悪いところである。これは数年後の閉店を招く、誤った認識だ。
メーカーから供給される商品(クルマ)は、綿密な市場調査の上で、他社よりも競争力の高いものが用意されている。この商品が売れるのは至極当然のこと。
お店が良いから売れるのではなく、商品が良いから売れていることに気づかなければならない。
昨今は、正規ディーラーに行かなくても新車は手に入るし、契約時にディーラーでの交渉を必要としないサブスクなども登場した。
ディーラーの存在意義を「クルマを売る」以外に見出さなければ、近い将来、自動車ディーラーは不要なものとなる。
営業マンや整備士に「あなたの仕事は何ですか」と聞いて、「クルマを売ること・整備すること」とだけ返ってきたら、危険水域。業務内容を自らで勝手に定義し、狭めている。
10年前と同じことを今も続けていたら、ディーラーの未来は無い。
利益を生み出し続ける事業として、ディーラー(自動車販売店)を残すのなら、クルマを売る以外の役割を顧客や時代から読み取り、自らを変化させなければならないのである。
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