■Tバールーフ仕様も設定していた
グレード構成は、エントリーとなる1.5Lエンジンの「タイプA」、1.5Lエンジンと1.6Lエンジンの選択が可能な中間グレード「タイプB」、アナログメーターやハードサスペンションなどを備えた1.8Lエンジンのスポーティ仕様「タイプS」の3つを用意。
このうち、タイプBとタイプSでTバールーフが選択できた。当時の価格は、113万6000~181万5000円(東京・名古屋・大阪・福岡地区)を掲げ、これはサニーの中間グレードから上級グレードとなる価格帯であった。
国内では、S13シルビアの弟分としてカッコよく気軽に乗れるクルマを求める女性をメインターゲットとみていた。日本でのNXクーペの知名度を高めたのは、ユニークなテレビCMだ。当時最新のコンピューターグラフィックを活用し、擬人化されたNXクーペが壁から飛び出して変幻自在に空中を飛び回る演出が大きな話題に。
また、未来的なフォルムや女性をメインとした気軽なカッコいいクルマというキャラクターを持つ新提案のクルマとして、「タイムマシンかもしれない。」というキャッチコピーが使われた。
彼の地、米国では成功を収めたものの、残念ながら、国内販売面では、低調なままで推移。そして、7代目サニーシリーズとともに販売を終了。後続車は、再びサニー色を強めたサニールキノ(後にルキノに改名)となり、NXの名は国内では一代かぎりとなってしまった。
■ヘリテージコレクションにはタイプBが展示される
収蔵される記念車は、デビューイヤーである1990年式タイプB。1.5Lエンジン車の4速AT車で、イメージカラーのイエローパールを纏う。ノーマルルーフ仕様であることも、CMモデルと重なるところだ。
今見ても、特徴的なフロントマスクは斬新。フロントマスクには、メーカーどころか、車種別エンブレムもないのは現代では考えられない自由さがある。その表情は、満点の笑顔にも見え、凄くフレンドリーで元気な走りを予感させてくれる。
ただ、癖の強さがあったのも確か。そして内装はデジタルメーター以外は普通。もう少し遊び心があってもよかったのではと思う。そんなことを考えながらテールゲートを開けると、中からは巨大なNXクーペのぬいぐるみが出現して驚かされた。恐らく販売促進用グッズと思われるが、今や実車同様に希少なアイテムだろう。
■NXクーペを再現したオブジェも製作された!
当時のべストカーを振り返ってみると、なんとテレビCMのグンニャリ曲がったNXクーペの姿を再現したオブジェが存在したことが判明。1990年3月10日号によると、首都圏サニー系販売会社8社と日産自動車の首都圏営業部が共同で行ったPRプロジェクトで、制作会社が実車のNXクーペを参考に鉄骨の骨組みを組み、FRPで架装していた。
もちろん、一部のパーツは実車のものが使われており、リアルさも追求された。当初500万円の予算でスタートしたが、最終的には約1500万円の製作費がかかったというのは、なんともバブルらしいエピソードといえよう。
都市部には展示され、さらに地方のディーラーからも展示の引き合いがあったというから当時、実物を目撃した人もきっといたことだろう。また、同号の試乗テストでは徳大寺有恒氏がレポートを寄稿。
デザインについては、「初めからデザインには魅力が感じられず、もっと先進的でよかったのでは」と厳しい指摘。ただ、日本も地方の働く女性たちが軽自動車を卒業し、このクラスを選ぶようになると予測していた。
セクレタリーカーとしては面白い提案だったNXクーペだが、そのニーズのなかった日本では、存在意義を示すことが出来なかった。また、スポーティ仕様はあったが、当時のほかの日産車のように、本格的なスポーツ性能を追求したものでもなかったので、ネオヒストリックとしての人気も皆無。
それだけに今は絶滅種となってしまった。逆に言えば、日産ヘリテージコレクションの1台は今となっては本当に貴重な1台なのだと言うことができる。
【画像ギャラリー】日産NXクーペは1990年代の個性派モデル! セクレタリーカーとして北米では大成功したが……(21枚)画像ギャラリー
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