■運転中、血圧がイッキに上がるシチュエーションは?
約20分の運転で血圧が30~40mmHgも上昇するという。なかでも血圧が一気に上がってしまういくつかのシチュエーションが実験によってあきらかになっている。
たとえば、「自動車運転中の連続血圧測定」における実験で、被検者が高速道路で追い越し車線に車線変更をしようとしたした瞬間、前方のクルマも同じく車線変更をして走行を妨げられたと感じたとき、収縮期血圧が45mmHgも上がってしまったのだ。
さらに、高速道路でトラックと小型車が並走していて追い越しができずイラッとした瞬間、運転前は120mmHgと正常値だった人の収縮期血圧が178mmHgまで一気に上昇してしまったのだ!!
一般道でも信号待ちでイライラしただけでも同じく運転前は正常値だった人の収縮期血圧が156mmHgまで急上昇してしまったという結果も……。
ほかにも、狭い道から急にクルマが現れて急ブレーキを踏んだとき、パトカーがサイレンを鳴らして後方から近づいてきたときなども軒並み収縮期血圧が30mmHg以上は上昇することが報告されている。
こういったことから、運転をしていれば頻繁に遭遇するようなシチュエーションでも血圧は一気に上がってしまうことがわかる。
(参考文献:万井正人“自動車運転中の連続血圧測定”人間工学, Vol.3,. No.1, p45-52, 1967)
■運転中の血圧上昇を防ぐポイント
ここで、運転中の血圧上昇を少しでも抑えるための方法を紹介しよう。
●定期的に休憩をとって、緊張をゆるめる
●軽いストレッチをするなどして、ストレス解消をする
●スピードの出し過ぎや、無理な追い越しをしない
●通常時に血圧が高めの人は、運転前に血圧を計測し、いつもより血圧が高いといったときは運転を控える
●過労運転を避ける
基本は心身を過度に緊張させる要因を減らすことが最も効果的な対策法。ただし、運転中に血圧がある程度上昇してしまうのは不可避。そのため、日頃から体調を整え、高血圧症と診断された人は投薬治療を受けて血圧をコントロールすることが必須となる。
■劣化した血管で運転をするとヤバいワケ
血圧が高い状態が続くと血管の壁にキズがついて、血管が劣化してもろくなることがわかっている。
血管はゴムホースにたとえるとわかりやすい。劣化したゴムホースは柔軟性がなくなり、蛇口を一気にひねって水圧をかけたりすると穴が空いて水が漏れてしまう。血管もゴムホースと同じで、劣化が進むと破れやすくなる。
そもそも血管を劣化させる元凶は悪玉コレステロール。悪玉コレステロールが血管の壁に付着して蓄積することで血管はどんどん劣化して柔軟性が失われる。これが動脈硬化という状態だ。
動脈硬化に陥ると、興奮したり、ストレスを感じたり、運動をして大量の血液が心臓から押し出されたとき、劣化した部分が破れてしまうリスクが高くなる。
運転中は前述のとおり、血管がいつもよりも縮こまった状態になっているため、心臓がドキドキしたり、イライラするような事象が発生するとよりいっそう血圧が上がってしまうおそれがあり、血管が破れるリスクはよりいっそう高まる。
運悪く、血管が破れた部分が脳であれば脳出血、心臓であれば大動脈瘤破裂などの重篤な疾患に見舞われる。もし運転中にそれが発生したら、大事故につながりかねない……。
こういったことから、健康診断で治療が必要な高血圧症まではいかないまでも血圧が高いと指摘された人は、血圧を下げる努力をしてほしい。
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