オーストラリアで実証実験が始まった水素エンジンハイエース。日本での開発車両に乗ってわかった水素エンジンの大きな可能性。思ったよりも実用化はそう遠くないかもしれない!?
※本稿は2023年11月のものです
文/ベストカー編集部、写真/トヨタ
初出:『ベストカー』2023年12月26日号
■豪州で水素エンジンハイエースの実証実験開始!!
日本ではスーパー耐久に参戦中のカローラによって、水素エンジンの耐久性や燃焼、安全性といった技術が鍛えられていく一方、オーストラリアではハイエースの水素エンジン車を使った実証実験が始まった。
メルボルン近郊の警備会社や建設会社が公道を使い、人や荷物を載せ、運び、下すといったことを繰り返す。
交通の流れのなかでは、ストップ&ゴーはもちろん、さまざまな負荷がかるだけに、市販化を見据えた実証実験と言えそうだ。
その水素エンジンハイエースに試乗の機会が与えられた。クルマは300系ハイエースのコミューター仕様。V6、3.5Lターボを気体水素エンジンにしたもので、トランスミッションは10速AT。
オーストラリアにこの仕様はなく、2.8Lディーゼルターボとなるが、さまざまな可能性を探るため、レクサスLXのエンジンとトランスミッションを搭載している。
エンジンスペックは120kW、354Nmというから163ps、36.0kgmとなり、2800kgを超える300系ハイエースには物足りないかも? と思ったらさにあらず。低速からスムーズな加速を見せ、スピードの乗りもいい。
「ハイ、この直線で全開!」と隣に乗ったトヨタの技術者がノリノリだったこともあり、ややオーバースピード気味でコーナリングしてみたが、ブレーキの効きも充分で安心感もあった。
■カーボンニュートラルの有効な手段になる!
現在満充填で200kmほどの航続距離というが、トヨタが得意とするハイブリッド化によってまだまだ伸びる可能性はあると技術者の方が教えてくれた。
また本来ディーゼルエンジンが搭載されるとあって、NOx対策に尿素SCRのシステムを使っている点に注目したい。
水素エンジンはCO2を発生しないが燃焼時にNOxが出る。そのNOxはアドブルー(尿素水)によって抑えられている。つまり、CO2もNOxも出さないという究極の内燃機関になっているのだ。
豪州は豊富な褐炭が埋蔵され、その褐炭から水素を作り、日本に輸入するプロジェクトが進んでいる。
既存のディーゼルエンジン車をレトロフィットによって水素エンジンに換装できるとしたら、カーボンニュートラルの有効な手段になるはず。
水素エンジンの実用化に向けた取り組みは今後加速していきそうだ。
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