「ほぼ」市販タイヤでツクバ58秒台!!! GT-Rをガチで最速にしたダンロップの心意気とは!?

ダンロップが技術の粋を投入して開発! これがGT-R2025年モデル用純正装着タイヤになるのか?

 空力特性や4WD制御が大きく改良されたGT-R2024年モデル(MY24)。特にNISMOはトラクション性能が大幅に向上したことで、コーナー脱出速度が高まった。これは富士スピードウエイのような高速サーキットでより大きな効果を発揮するのだが、では、全体的に速度域が低いツクバではどうなのか? 日産自動車がGT-R NISMOの進化を証明するためにツクバアタックを実施したところ、MY20の59秒361を0.144秒上回る59秒217をマークした。タイヤはもちろんOE装着の『SP SPORT MAXX GT600DSST』。これがまずはダンロップの目指す「基準タイム」となった。

 開発を担当した宇野弘基氏によれば、「OEタイヤの基準でさらに高みを目指すタイヤ開発だということに意義があるのです」という。

 今回のタイムアタックは日産自動車が主体として実施されたもので、日産チームは完全市販車上体のGT-R NISMOでさらなるタイムアップを目指してアタックを繰り返す。ダンロップは、さらなる開発技術を投入した「次期型OE装着仕様」を念頭に置いた『SPORT MAXX』を開発し、日産チームのタイムを上回るタイムを目指す。宇野氏は「目指すは58秒台!」と自信を覗かせる。

ショルダー部の形状やトレッド面のプロファイルなどに新技術が盛り込まれている。もちろんゴムやトレッドパターンも新開発だ
ショルダー部の形状やトレッド面のプロファイルなどに新技術が盛り込まれている。もちろんゴムやトレッドパターンも新開発だ

 ダンロップチームが用意したタイヤを見ると、トレッドパターンが現行OEタイヤに対し若干異なっており、やや横溝が細く、ブロック面が大きくなっているように見える。ショルダー部のプロファイルも若干異なっているようだ。サイドウォールの刻印は『SPORT MAXX PROTO』と記されている。「このために専用の金型を作ったので、刻印はPROTOと入れました。ちょっとした遊び心です」と宇野氏は笑う。このタイヤが今後のGT-R純正タイヤに採用されることになるのだろうか?

ワントライで58秒台をマーク! これって歴史的瞬間だぞ!!

 ドライブを担当するのは飯田章選手。GT-Rとともにタイヤ開発にも長らく関わって

おり、すべてを知り尽くした飯田選手はまさに適任だ。

「ベストなコンディションは朝イチの1周です。気温が上がってしまうとエンジンパワーが落ちてタイムが上がりません。路面温度が上がりすぎてもタイヤの性能を引き出し切れなくなってしまいます。今朝は気温が低く、風もなく湿度も低いのでタイムアタックには理想的なコンディションです」と飯田選手。

タイムタックを前に最終的な調整をするダンロップチーム。ドライバーは飯田章選手がつとめる
タイムタックを前に最終的な調整をするダンロップチーム。ドライバーは飯田章選手がつとめる

 ウォームアップランを終えた飯田選手がバックストレート中盤からアクセルを全開にする。一段とエンジン音が高まり、最終コーナーをコース幅目いっぱい使って立ち上がる。1コーナーからS字を抜けて第一ヘアピンを短いコース取りでクルリと回りダンロップブリッジ下の右コーナーをかすめるように切り取っていく。無駄のないライン取りで第二ヘアピンへアプローチ。

 きれいな姿勢で最終コーナーを飛び出しメインストレートをフル加速。コントロールラインを通過すると、タワーの計時ボードに58秒820と表示された。パドックから「おおおおっ!」と声が聞こえるとともに拍手、そしてハイタッチするダンロップのメンバー。OEタイヤでタイムアタックをする日産チームのタイムを0.397秒上回るタイムをたたき出した瞬間だ。目標の58秒台も達成した。この後日産チームも59秒078へタイムを短縮したが、残念ながら58秒台には入らなかった。この0.139秒がタイヤの差、なのだ。市販車でOEタイヤに準拠したタイヤで58秒台をマークする。まさに歴史的瞬間だった。

朝市のタイムアタックで目標の58秒台をマーク! 飯田章選手が手を添えるのは東京オートサロンで展示した新ロゴマーク「SPORT MAXX」を刻印した同仕様のタイヤだ
朝市のタイムアタックで目標の58秒台をマーク! 飯田章選手が手を添えるのは東京オートサロンで展示した新ロゴマーク「SPORT MAXX」を刻印した同仕様のタイヤだ

次ページは : ダンロップタイヤの進化を下支えする技術開発としての大きな意義

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