本家オペルの100万円安!? 隠れた傑作 トラヴィックの軌跡 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル トラヴィック(2001-2005)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:SUBARU


■OEMながら本家をしのいだ!? 先進ミニバン

 ゼネラルモーターズ(GM)の傘下だったオペルが開発した「ザフィーラ」のOEM供給版として富士重工(現SUBARU)から発売され、一部の自動車愛好家からは「熱烈」といえるほどの支持を集めた傑作小型ミニバン。それが、スバル トラヴィックです。

車体全体を滑らかな形状とし、安心感と安定感のあるデザインを追求。全車に2.2L直列4気筒DOHCエンジンを搭載。駆動方式はFF。OEM車ながら「本家」のザフィーラより100万円安かった

 トラヴィックの「オリジナル」にあたるオペル ザフィーラは、全長4315mm×全幅1740mm×全高1630mmという比較的コンパクトなサイズの3列シートミニバン。

 その3列目シートには、未使用時は床下に収納できる「フレックス7シーティングシステムという便利な機構が採用されていました。オペル版であるザフィーラの搭載エンジンは1.8Lの直4DOHCです。

 そんなザフィーラのアジア向けバージョンとして企画され、結果として2001年にデビューしたのが、当時はGMと提携関係にあったスバルが販売を担当した「トラヴィック」です。

 生産は日本国内にある富士重工の工場ではなく、GMのタイ工場で行われました。

積載量が多い場合は、2列目シートを前に出すことで最大640L、さらに2名乗車時に2列目シートを折りたたみ3列目シートを格納することで、最大1705Lのカーゴスペースを確保

 トラヴィックのオリジナル版であるオペル ザフィーラは「速度無制限のアウトバーンであっても、7名フル乗車の状態で安全・確実に超高速巡航が行えること」というテーマで開発されましたから、タイ工場製とはいえトラヴィックの走行性能も抜群というか、当時のミニバンの水準を大きく超えるものでした。

 そして本家ザフィーラのエンジンが1.8Lであったのに対し、スバル トラヴィックは余裕たっぷりの2.2Lで、それでいてオペル ザフィーラよりかなり安いプライスで買えたため、トラヴィックは一部の車好きには確実に刺さりました。

 しかし残念ながら日本全国にいらっしゃる「一般的な人々」に刺さることは特にありませんでした。

 そのため2004年の年末頃、初代オペル ザフィーラの生産中止に伴って、スバル トラヴィックのほうも生産終了となりました。

■GMとの提携終了とともに生産も終了 しかし「隠れた傑作」の呼び声も高い

 シュアな走りも堪能できるミニバンとして一部の層には刺さったスバル トラヴィックが、1代限りで終わってしまった理由。

 それはある意味簡単な話で、「2005年10月にはGMとスバルとの提携関係が完全に解消されたから」ということになります。

 その後2005年12月には2代目のオペル ザフィーラが日本でも発売されたわけですが、そのときはすでにスバルとGMは「赤の他人」でした。

 そのため、スバルとしては2代目ザフィーラのスバル版を日本で売る義理はいっさいなかったわけです。

ダッシュボード上面を低く抑え、同時に運転席、助手席の着座位置を高めに設定することで、広々とした視界と開放感を実現している

 そしてそもそも、その頃はGM自体が深刻な経営危機に陥っていましたから、2代目ザフィーラのOEM供給版をアジア全域で幅広く売る……なんて計画を立てる余裕もありませんでした。実際GMは、2009年6月には倒産しちゃいましたし。

 そんなこんなの理由でスバル トラヴィックは1代限りで生産終了となったわけですが、惜しまれるのは、その後スバルから「トラヴィック的な車」が登場していいないことです。

「トラヴィック的な車」とは、要するに「適度に小ぶりなサイズの3列シートミニバンで、内装の豪華さとか便利さうんぬんよりも“走り”を重視したモデル」ということです。

リアビュー。全長に対してホイールベースを2695mm、全幅を1740mmと大きく取ることで、大人7人が無理なく乗れる室内空間を確保。同時にコーナリング時と高速走行時の操縦安定性を実現させた

 その後スバルは2008年6月、独自開発の「エクシーガ」という3列シート車を発売しました。

 でも、あれとはまた違うニュアンスの「背が高めのミニバンなんだけど決して馬鹿デカくはなく、そしてとっても走りがいい、カタマリ感のあるフォルムがステキな車」をデビューさせれば、けっこう売れるのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

 それともやっぱり、そういった車はトラヴィックと同じように「一部の人に刺さるだけ」で終わってしまうのでしょうか……。

■スバル トラヴィック 主要諸元
・全長×全幅×全高:4315mm×1740mm×1675mm
・ホイールベース:2695mm
・車重:1480kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、2198cc
・最高出力:147ps/5800rpm
・最大トルク:20.7kgm/4000rpm
・燃費:10.0km/L(10・15モード)
・価格:234万円(2001年式 Lパッケージ)

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