■2台の空力対策
車体側面を見てください。両車ともにサイドシル下方にリップ状のスカートを付けています。車体下面を流れる風がサイドシルの下から漏れないようにするためです。
タイカンのAピラーはずいぶんと立たせて、ボンネットを大きく見せ、力強いスポーツ感を演出しています。ここはポルシェの特徴的なシルエットで、EV化してもポルシェとしては継承したいポイントだということでしょう。
EQSはボンネットフードの傾斜角度がAピラーにそのまま繋がった、いわゆる「ワンモーション・フォルム」を採用していますが、それ自体に空力面の効果はほとんどありません。むしろ従来のエンジン搭載車と差別化した、未来感の演出です。
それよりも、タイカンクロスツーリスモは最初に登場したスポーツセダンタイプに比較して空気抵抗は相当増えています。
リア周りをスポーツワゴン風のバックドア形状にしているため、ルーフ後端部では風を巻き込み乱流が発生するためです。その対策としてルールスポイラーを装着していますが、充分ではありません。
また、車体の側面を流れる風が車両後部に巻き込むことで作られる大きな「渦」が生みだす空気抵抗を減らすために、リアフェンダー部を張り出して「大きな棚」が設けられていますが、これも充分ではありません。
セダン形状とワゴン形状での空気抵抗の違いは、ベンツCLAのクーペとシューティングブレークでも、タイカンと同様に起こっています。
EQSはトランクリッド後端のリップスポイラーがもの凄く効いています。ルーフ後端からリフトバック形状で斜めのラインとなっているため、ルーフ後端の風は途中で剥離して渦を作ってしまいます。
しかし、この小さなリップスポイラーによって巻き上げられた風が乱流部とぶつかることで打ち消し合うのです。結果的に、長く真っ平なトランクリッドのクルマと同様なスムーズな風の流れを作っているのです。
EQSのホイールは空力を考えた造形です。ホイール側面に沿ってきれいに風が流れます。また、ホイール内側の風をきれいに外へ排出しています。
タイカンはそれほどでもありません。EQSのCd値は0.2ですが、タイカンは0.25前後だと思います。クロスツーリスモではないスポーツセダンタイプでは0.21程度でしょう。
■最新のインパネは液晶パネルだらけ
EQSはサッシュレスドアなのですね。しかしそのぶんウェザーストリップは分厚いゴムが三重になってしっかりとシーリングしています。ドアの開閉もしっかりとしています。
サイドシルは分厚いですが、大容量のバッテリーを搭載して、側面衝突の対策をすると、この程度になるのは当然です。乗降性も問題はありません。
インパネはもの凄いですね。運転席から助手席まで全面液晶パネルで、センターには大型のモニターが配置されます。助手席側の液晶画面では、例えばPCやスマホ画面を表示したり、エンターテイメント類の表示や動画の再生もできます。これはインパクトがあって凄いですね。
インテリアトリムの質感もよく、アルミ素材の使い方も上手です。
EQSのシートはもの凄くいいです。ベンツのなかでは一番です。形状はもちろんですが、革の質感がとても上等。手触りやソフトな座り心地、さらに適度な沈みや包まれ感。このシートは素晴らしいです。
ワンモーション・フォルムではAピラー周りの視界がプリウスのように大きな死角なっていないか心配でしたが、実際に運転席に座るとまったく問題はありません。ピラーの裏側には大きな三角窓があるので、歩行者や対向車、ガードレールの視認性は確保されています。
後席ドアもサッシュレスのシーリングが三重でしっかりとしています。それにしても液晶タブレットがあちこちに配置されています。前席背もたれ部に後席乗員用のモニター画面があります。
センターアームレストにはシートやエアコンなどを操作する液晶タブレッドがあります。これは着脱式で、後席の乗員がゆったり座ったままでの操作もできます。
リアシートもいいですね。リクライニング幅も大きく、居住性は素晴らしい。
後席乗降性もいいです。サイドシルはちょっと厚みがあるもののフロアとの段差が小さく、また、シート座面がちょうどいい高さなのでお尻がスッと出し入れできます。ドア開口部下側の間口が広いので、足の出し入れもスムーズです。
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