世界各地でEVに異変が起きている。今度は大御所メルセデスが2030年の完全電動化を撤回すると発表した。こうなると、EV化の波に乗らなかった日本のクルマメーカーは正しかったのではなかろうか?
文/ベストカーWeb編集部、写真/メルセデスベンツ
■これから新型エンジンも作ります!
2021年7月、「2020年代の終わりまでに、すべての販売車種を完全電気自動車(BEV)にする」と発表したメルセデスベンツ。そのドイツの大御所が宗旨替えを表明した。
それが明らかになったのは、2023年2月22日にドイツ・シュツットガルトで開かれた同社の2023年通期の決算説明会。壇上に立ったオラ・ケレニウスCEOが「市場に製品を押し付けてまで、人為的にこの目標を達成しようとするのは理にかなっていない」とスピーチしたのだ。
同社は2024年のxEV(電動車両の総称)のシェアが想定したようには伸びず、約19~21%にとどまると予想。その結果、来年度のグループ収益も2023年レベルに留まりそうだと発表した。
これを受けてメルセデスの戦略はどうなるのか。まずは2030年にフル電動化されるはずだった同社のラインナップには、プラグイン・ハイブリッドなどの内燃機関モデルが引き続き存続することになる。
これに関して驚くのは、メルセデスが新しいエンジンの開発も始めているということだ。各国のエンジン車の排ガス規制は今後ますます厳しくなっていくから、これをクリアするためには新型エンジンの投入が必要と判断した模様だ。
この判断はプラットフォームにも影響する。メルセデスベンツは2022年に発表したEQEを皮切りに、BEV専用プラットフォームを広く用いる方向だった。
ところがエンジン車存続を受けてこれを転換、新たにエンジン車とBEVが共用できる中・小型車向けのプラットフォーム(メルセデスベンツ・モジュラー・アーキテクチャ)を新開発するようだ。その第1号車として、近く新型CLAが登場するともアナウンスしている。
■トランプ再選でエンジン車が復活か?
長期的に見れば、自動車がBEVに置き換わっていく流れは止めようもないが、このところ世界各地でEVの失速が相次いでいる。
たとえばアメリカでは、フォードやGMのBEVが長期在庫化しているというし、メルセデス同様2030年までにフルEV化を目指していた韓国ジェネシスは、急遽ハイブリッド車の開発を始めたことが明らかになった。
ルノーが設立した電気自動車の専門会社「アンペア」も奮わない。1月末には、予想した株価が望めないとして、予定していた株式上場を先送りした。
こうした雰囲気を増長しているのが、今冬に行われるアメリカ大統領選だ。ここでは前トランプ大統領が復帰する可能性が高まっているが、彼が当選すればパリ協定から再離脱を宣言することは確実で、アメリカのEV推進政策は水泡に帰すといわれている。
こうなるとプラグイン・ハイブリッドが2030年以降も存続する可能性が高くなってきた。となると、日本車メーカーに追い風となることは間違いない。豊富なノウハウを生かして、環境にも優しい日本流のエコカーを作ってほしい。
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