レクサスが日本上陸して約15年 日本で成功しているのか?

 十年ひと昔というが、レクサスが日本で販売を開始したのは2005年だから約15年になろうとしている。導入当初は想定した販売台数を大きく下回ることもあったが、認知度は年々増しているように感じる。

 プレミアムブランドとして、ドイツの御三家、メルセデスベンツ、BMW、アウディに対し真っ向から勝負を挑んでいるが、販売面で成功しているといえるのか?

 本企画では、日本での販売をもとに御堀直嗣氏がレクサスは成功しているのかを考察すると同時に、今後の課題などについても言及する。

文:御堀直嗣/写真:LEXUS、メルセデスベンツ


2019年現在11車種をラインナップ

 レクサスは、1989年に米国で立ち上げられたトヨタの高級車ブランドである。日本の自動車メーカーが、自社名とは別のプレミアムブランドを米国市場で興す取り組みは、1985年にホンダがアキュラではじめた。

【レクサスのラインナップの画像ギャラリー】

2005年に日本で販売を開始した時はGS、IS、SCの3モデルのみのラインナップで、ISが販売の大半を占めていたが、現在では11車種までラインナップを拡大

 そして、日産自動車も、レクサス同様にインフィニティを立ち上げることになる。それら高級ブランド3社は、米国でそれぞれ成功をおさめたが、国内での展開をはじめたのは、2005年のレクサスのみである。

 それからほぼ15年を経ようとする今日、レクサスの国内浸透度はどうであるのか。

 現在レクサスは国内で11車種を販売する。そのうち、4ドアセダンがLS、GS、IS、ESの4車種で、SUVはRX、LX、NX、UXの4車種、2ドアクーペのRCとLX、そしてハッチバックのCTである。

奥からLC、LS、LXが並ぶ。この3モデルが各ジャンルのそれぞれトップに君臨。高額車両だが販売実績も悪くないのがレクサスの強み

レクサスの販売台数はメルセデスベンツに匹敵

【レクサスの販売台数】
2015年 4万8237台
2016年 5万2033台
2017年 4万5690台
2018年 5万5021台
2018年(1~6月累計) 3万906台
2019年(1~6月累計) 3万1537台

 昨2018年(1~12月)の販売台数は、各車種の合計で5万5021台だ。この成績がどれほどの水準であるのかを、プレミアムブランドが多い輸入車の販売台数と比較してみる。

 日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によれば、2018年度(2018年4月~2019年3月)の1位はメルセデスベンツで6万6948台、2位はフォルクスワーゲン(VW)で5万2044台、3位にBMWの5万886台とある。

 統計数値の比較が、年(レクサス)と年度(JAIA)と若干異なるため厳密にはいえないが、VWの中心はゴルフなので輸入車の中でも大衆車寄りといえなくはないものの、少なくともBMWより多くの台数をレクサスは販売してきたことになる。

レクサスの販売台数を大きく引き上げたのがコンパクトSUVのNX。デビュー当初は月販1万台オーバーの実績を残すなどレクサス躍進の要因となった

 ちなみに、4位はMINIで2万5794台、5位はアウディで2万3917台であり、レクサスの半分以下の販売台数である。

 こうしてみると、レクサスの国内での販売状況は、輸入車のプレミアムブランドと十分競争力を持ち、そもそも米国でトヨタとは別の高級車ブランドとして生まれた当初の狙いが、国内でも的を射ている様子がうかがえる。

 ホンダのアキュラと日産のインフィニティは、国内での販売動向が見通せないとして導入せずに今日に至るが、15年近くの歳月がかかったとはいえ、国内におけるレクサス販売は、台数という成績の面で成功といえるのではないか。

すでにショーでプロトタイプが公開されているLCのオープンモデルも日本への導入は確実。エレガントな高級パーソナルオープンの注目度は高い

 さらに、現在輸入車1位のメルセデスベンツは、過去10年において対前年比でプラスの販売成績をおさめ、2010年度と比べて2倍以上の販売台数を残すまでに現在ではなっている。その急成長ぶりは、ことに東京を走るメルセデスベンツの多さからも想像されるほどだ。ところが、2017年度から2018年度へかけて販売台数が落ちている。その数は、約3000台だ。

 これに対し、レクサスは2017年から2018年にかけて9300台以上数を伸ばしており、2年前の2016年の5万2033台から見ても、3000台近い上積みを得ているのである。

 巷に、レクサスがメルセデスベンツの販売を食いはじめているのではないかという声さえある。

 そうした噂が流れるレクサスの強みは、どこにあるのだろう。

日本で販売を開始して実質モデルが消滅したのはHS250hのみ。プレミアムブランドのハイブリッドセダンとしては中途半端だったのが苦戦した要因

ハイブリッドの設定はトヨタ以上に効果的

 レクサス各車種のなかで、多くの台数を販売しているグレードがハイブリッド車(HV)である。4ドアセダンのLS、GS、ISでHVの数がガソリンエンジン車を上回り、ESはHVのみの設定だ。SUVにおいても、RX、NX、UXのそれぞれで、HVの台数が多い。

 HVは環境技術と思われているかもしれないが、トヨタが2代目プリウスからハイブリッド・シナジー・ドライブの言葉を用いだしたように、単に燃費に優れるだけでなく、高級車に欠かせない静粛性や、モーターを併用する滑らかな加速などが、乗り味と価格に見合う価値で、消費者を納得させる性能をもたらしているのであろう。

レクサス初のプレミアムハッチバックとしてデビューしたCTだが、台数を稼ぐには早急の刷新が必要。レクサスにとっては重要なモデルだが現在は放置されている

 また、最新のESやUXは、トヨタのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を活用した、レクサス版のGA‐KやGA‐Cプラットフォームを採用したことにより、走行性能だけでなく乗り心地においてもしなやかな上質さを手に入れるようになった。

 それらの乗り味は、ドイツ車とは一線を画し、またフランス車などとも違った雰囲気を備えており、いよいよレクサスらしさというものが成熟しはじめたのではないかと思わせるところがある。

 もちろん造形の面で、たとえば2012年のGSから採用されたスピンドルグリルも、だいぶ目に馴染んできたかもしれない。

レクサスはエクステリア以上にインテリアのデザイン、質感に定評がある。素材、色遣いなどライバルの追従を許さない。レクサスにしかないムードがある

 室内の淡く、明るい色合いの採用なども、ドイツ車とは異なり、近年のボルボ人気もそうした室内装飾の持ち味が好まれているともいえる。

 設立された1989年から数えると20年の歳月をかけ、レクサスは地に足の着いた立ち位置を見つけたかにみえる。

富裕層の目は確実にEVに向かっている

 そうしたなかで、販売車種の人気動向をみてみると、やはり近年の傾向としてSUVの台数が圧倒的に多い。5万5021台の半数以上がSUVだ。

 しかしながら、昨今、4ドアセダンが売れないといわれながら、レクサスの4ドアセダンも販売台数の3割を占めている。そしてもっとも高価格帯となるLSが、4ドアセダンの半数以上なのだ。

2017年にフルモデルチェンジで刷新されたフラッグシップセダンのLSは現在は少し販売が落ち着いているが、着実に売れているのはブランドが認知されている証拠

 世界的に見ても、最上級車種の4ドアセダンがしっかり売れていることが、プレミアムブランドたるゆえんであり、レクサスはそうした位置づけを外していないといえるだろう。

 今後については、メルセデスベンツがいよいよ電気自動車(EV)の導入を日本向けにも始めた。英国のジャガーは、最上級4ドアセダンのXJをEVにすると宣言した。またSUVのI‐PACEはすでに日本導入を初めており、今年の予定台数はすでに受注ずみであるという。

2019年7月4日にメルセデスベンツEQCの日本での販売が発表された。電動SUVで価格はEQC400 4MATICが1080万円。最近のメルセデスの積極攻勢は凄い

 EVの動向は、まだ確定的でない側面はあるものの、英国の高級車であるベントレー(現在はVW傘下)もEVのコンセプトカーを先日発表したばかりだ。

 これに対し、トヨタは2030年までにはなんだかのEVを投入するだろうと述べるにとどまり、当面は超小型モビリティとしてのEVしか日本では考えていないようだ。

 中国のBYDとの提携など、EV導入に際し不足分に課徴金のかかる市場にはEV導入を進めるトヨタが、果たしてプレミアムブランドとしてのEV化をどう進めるのか、その点はまったく見通せない。

レクサスは電動化に先駆けて自動運転を積極的に研究中。2019年1月にはLS500hをベースとした新型の自動運転実験車両のTRI-P4を公開

 しかし、テスラの浸透や、ポルシェも来年にはタイカンを日本に導入するなどにより、富裕層の目が次第にEVへ向かっているのも確かである。

 トヨタブランドとしてはともかくも、レクサスはどうするのか。そこが、この先の特に高価格帯の車種における販売動向に影響を及ぼしはじめるのではないだろうか。

 いまの成功も、その将来は見通しにくい状況ではある。

2019年の上海ショーでプレミアムミニバンのLM300hを公開。日本での販売は消極的だが、ドイツ御三家にないミニバンのラインナップは需要拡大に効果的かも

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