ホンダ アコードエアロデッキが短命だった訳【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ アコードエアロデッキ(1985-1989)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:HONDA


■美しい? 異端? 斬新なフォルムを纏い現れたワンダーシビックの兄貴分

 既存のシャシーを使い、それまでにないカタチの車を意欲的に開発していた1980年代半ばのホンダ。

 そんなホンダから登場した、「ちょっと時代の先を行き過ぎた名作シューティングブレーク」。それが、ホンダ アコードエアロデッキでした。

 アコードエアロデッキのベースは、1985年に登場した3代目アコード。リトラクタブル式ヘッドライトが採用された、あのなかなかのヒット作です。

 そしてその派生車種としてセダンと同タイミングで発表されたのが、今回ご紹介するアコードエアロデッキです。

「ロー&ワイド」の考え方を基調に、デザイン・トレンドをいち早く具現化したロングルーフのビュレットフォルム(弾丸形状)を採用、新しい3ドアの概念を提示した

 セダンのリア部分を200mm切り詰めたとはいえ、決して超コンパクトではないボディサイズなのに、5ドアではなくあえて「3ドア」を採用。

 そしてボディ後端はいさぎよくスパッと切り落としたような造形ですが、そこへ至るロングルーフのラインはなだらかに、そして微妙に下がっていくという得も言われぬニュアンスでした。

 要するにそれは「シューティングブレーク」と呼ばれるタイプの車でした。

 シューティングブレークというのは、もともとは英国の貴族が使っていた「狩猟用ワゴン」という意味ですが、最近では「やや細身のステーションワゴン」ぐらいの意味合いで使われています。

 アコードエアロデッキは、ロングルーフの後端付近から始まるハッチゲートの作りも特徴的でした。

 そのゲートは「ルーフ部分まで回り込んで開く」というタイプで、なおかつルーフに回り込んでいるゲート部分はガラスだったため、デザイン上のアクセントになっているだけでなく、後席居住空間はとっても明るく開放的だったのです。

ルーフ後部から開くガルウイング型テールゲートを採用。リアルーフ部分までガラスエリアをまわりこませることにより、快適で、明るく、開放感に満ちた居住空間を生み出した

 メカニズムの面でもアコードエアロデッキはなかなかのものでした。サスペンションはFF車としては世界初の4輪ダブルウィッシュボーン式で、トップグレードの2.0Siには最高出力160psのB20A型直4DOHCエンジンを採用。

 これはトルクフルでありながら高回転域まで気持ちよく吹け上がる、いかにもホンダらしい素晴らしいエンジンでした。

 そのような意欲作だったホンダ アコードエアロデッキですが、販売は今ひとつふるわず、残念ながら1989年にはアコードのフルモデルチェンジに伴って販売終了に。

 その後、2代目の「エアロデッキ」が登場することはありませんでした。

■「よくわからないワゴン」!? アコードエアロデッキが早すぎた2つの理由

 ホンダ アコードエアロデッキが、1985年から1989年という短い期間のみで生産終了となってしまった理由。それは「早すぎた」というひと言に集約されるでしょう。

 前章にてアコードエアロデッキのことを「要するにそれはシューティングブレークと呼ばれるタイプの車でした」と評しましたが、それは今だから言えることです。

大きなフロントウインドウや低く抑えられたインパネによって運転席・助手席の広い視界を実現

 当時の日本には「シューティングブレーク」などという言葉も概念もありませんでした(あったのかもしれませんが、筆者を含む多くの人間は知りませんでした)。

 そのため、当時の大衆にとってアコードエアロデッキは「斬新なシューティングブレーク」ではなく、「中途半端なサイズのよくわからないワゴン(みたいなもの)」でしかなかったのです。

 しかし現在であれば、シューティングブレーク的な車も完全に市民権を得ています。

 そしてもはや「大きいことはいいことだ」みたいなバブルっぽい価値観も過去のものとなっていますので、アコードエアロデッキの「やや小ぶりな3ドアのステーションワゴン」という変則的なパッケージングも、受け入れられる余地は十分あるはず。

 でも当時はそうじゃなかったのです。そこが、まずは「早すぎた」という理由のひとつです。

ロングホイールベースやワンダーシビックの流れを汲むワゴンタイプのシルエットにより、3ドアハッチバックながら中型セダン並みの後席スペースを確保した

 そして「ステーションワゴンブーム」がやってくる前に登場してしまったというのも、アコードエアロデッキにとっては不運でした。

 1985年から1989年頃の日本はまだまだセダンが全盛で、ステーションワゴンは「ライトバンと似たようなもの」ぐらいの扱いを受けていたものです。それもあって、アコードエアロデッキの販売は伸び悩んだのです。

 しかしエアロデッキが販売終了となったまさに1989年、その後のステーションワゴンブームの先駆けとなったスバル レガシィ ツーリングワゴンが発売されました。

「レガシィがもうちょっと早く登場していれば……」という歴史のifについて考えてみたりもしますが、まぁそれは後の祭りというやつでしょう。

 素晴らしいデザインと斬新なパッケージングで、一部の人間の心をわしづかみしたホンダ アコードエアロデッキ。それは今なお局地的には語り草となっている、伝説のプチ名車です。

 しかし時の流れには勝てず、今となっては中古車もほぼ絶滅状態。……残念というか、悲しいですね。

■ホンダ アコードエアロデッキ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4335mm×1695mm×1335mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1080kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1958cc
・最高出力:160ps/6300rpm
・最大トルク:19.0kgm/5000rpm
・燃費:12.0km/L(10モード)
・価格:205万9000円(1985年式2.0Si 5MT)

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