「葵の御紋」ではないが、自動車メーカーには自社のロゴマーク(エンブレム)がある。普段なにげなく目にするこのロゴマークにはどんな意味があるのか? 今回は主要メーカーのロゴとその意味を見ていこう。
文/長谷川 敦、写真/シボレー、スバル、トヨタ、日産、ポルシェ、ホンダ、マツダ、三菱、メルセデスベンツ、BMW、フェラーリ、テスラ
■どうしてロゴマークを付けるのか?
クルマのボンネット先端やテールに取り付けられているロゴマーク。実際にはこのマークがなくても性能にはまったく関係がない。では、どうしてロゴマークが装着されているのだろうか?
ロゴマーク、あるいはエンブレムは、中世ヨーロッパの貴族が自身の出自を示すために盾に紋章を描いたことが始まりといわれている。日本にもこうした習慣はあり、それが某世直し副将軍の葵の御紋に象徴されている。
やがて技術が進歩してクルマメーカーが次々に誕生すると、今度は自社のロゴマークを掲げるようになった。実際、ヨーロッパやアメリカのクルマメーカーのロゴには、貴族の紋章をルーツにしたものもある。
こうして現在はクルマメーカーの“顔”にもなっているロゴマークには、その背景にさまざまなストーリーを含んでいる。
次の項からは、各メーカーのロゴとその由来を紹介していこう。
■国内メーカーのロゴにはどんな意味が?
■トヨタ
比較的シンプルながら強い印象を残すトヨタのロゴ。このロゴは3つの楕円で構成され、その中心はトヨタの「T」を表している。
現在のロゴが採用されたのはトヨタ創立50周年にあたる1989年で、内部の楕円が持つふたつの中心点は、ひとつがクルマのユーザー、ひとつがトヨタの心を示している。 そして楕円の輪郭はふたつの心をつなぐ世界を表現しているという。
■日産
日産のロゴマークは、中心に自社名がアルファベット表記されたわかりやすいもの。2020年から使われている現行ロゴマークはシンプルだが、基本的なデザインはそれまでのロゴマークを踏襲している。
その旧ロゴマークは、同社の創業者である鮎川義介が残した 「強い信念は太陽さえも貫く」という意味の言葉「至誠天日を貫く」をイメージしている。
■ホンダ
中心の「H」がホンダの頭文字であることは誰にでも理解できるホンダのロゴマーク。実はこのHと輪郭の形状にも意味はある。このロゴマークは、ホンダ創業者である本田宗一郎が嗜んでいたという三味線の形状をモチーフにしている。
そう聞くと、なんとなく三味線に見えてくるから不思議だ。
なお、ホンダは2024年1月に新しい「Hマーク」を発表した。次世代のEVから本格採用される新ロゴマークでは輪郭が廃止され、新たな可能性を追求するために両手を広げた状態を表している。
■三菱自動車
スリーダイヤとも呼ばれる三菱自動車のロゴマークは自動車を含む三菱グループ全体で採用されている。
これはグループ創始者の岩崎弥太郎の家紋と、彼の出身である土佐藩の藩主だった山内家の家紋を合わせたもの。1903年に商標登録されて以来変化がないという伝統あるロゴマークだ。
■スバル
スバル(昴)は、日本語でおうし座のプレアデス星団を指す言葉。
そのためメーカーロゴマークはプレアデス星団を構成する6つの星を表している。
■マツダ
マツダのロゴマークは頭文字のMをデザインしたもので、そのMが未来に向かって羽ばたいている様子をイメージしている。
ちなみにマツダとは、創業者・松田重次郎の姓とゾロアスター教の最高神であるアフラ・マズダーが由来。だから「MATSUDA」ではなく「MAZDA」なのだ。
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