モビリオからフリードになって採用されていないもの。それはホンダが誇るセンタータンクレイアウトだが、なぜ採用されないのか、元ホンダ社員の小沢コージが新型フリードに対する期待として吐露する。
文/小沢コージ、写真/ベストカー編集部、ホンダ
■なぜセンタータンクレイアウトをフリードになってから採用してないのよ?
うう、なぜにないのよ!! 現行型フリードに乗るたびに思う謎と素朴な疑問。それが例のセンタータンクレイアウト採用バナシである。
最近もうすぐ出そうなホンダの絶対売れ筋商品、新型フリードへの期待を書きまくってきた小沢。今やトヨタとホンダにだけあり、あっても全然不思議じゃないスズキや日産にはない全長4.2m台コンパクトミニバンだけに人気集中。
今まではあるべき室内の広さや使い勝手について語ってきたわけだが、そもそも一番不思議だったのがホンダ自慢のセンタータンクレイアウトが非採用だという事実だ。
2001年登場の初代フィットで初導入したホンダ独自の機構で、燃料タンクを運転席下に配する(センタータンクレイアウト)で2列目下が空き、シートのチップアップ&ダイブダウンが可能になる。
■フリード独自のダブルフォールダウン採用の恩恵とは?
チップアップとは2列目の座面跳ね上げ機構で、これによってほぼ室内高の高さを持つ植木や大型荷物がそっくり積める。ぶっちゃけ、高さがあって横にできない荷物はトランクより積みやすい。具体的に同機構を採用している現行フィットはほぼ120cm高のモノが詰め、現行N-BOXは140cm高のモノが積める計算になる。
同時に2列目を畳む時に、座面ごと床に飛び込むように下げられるので広大な床を低く、なおかつフラットにできる。N-BOXで言うと2列目ダイブダウン時のフロア高は約47cm。明らかに競合モデルより低く、デカくて大きい荷物をより楽に積めるワケだ。
一方、フリードは後席の座面を前方に跳ね上げ、背もたれ部分を前倒しにして収納する「ダブルフォールダウン機構」を採用。3列シート車なので、2列目を倒したりしてもその後ろに3列目が存在し、フィットやN-BOXよりは使いにくいのかもしれない。
だが、間違いなく恩恵はあり、2~3列目を同時に倒した時はN-VANのような広大で低いラゲッジが広がるだろうし、2列目の片方だけを倒し、3列目に人が乗ることで人も荷物も同時に運ぶこともできる。百利あって一害なしだ。
しかも基本的にフリードは同世代のフィットと同じプラットフォームを使っている。無論、ミニバン化する際には2列目以後のフロアをかなり作り直すことになるので完全なる共有化は不可能なのかもしれない。
■フリードは先代も現行もセンタータンクレイアウトを不採用
しかし、運転席下にタンクを置くこと自体はできるはずである。何より現行フィット以前に存在した、3列スライドドア車のモビリオはセンタータンクレイアウトを採用していた。できないはずなどなさそうではないか。
もちろん、現行フリード開発者に「なぜ作らないの?」と聞くと、もっともらしい返事が返ってくる。やれ「センタータンクにすると1~2列目のウォークスルーがしにくくなる」とか、「プロペラシャフトが通しにくくなるので四駆が作りにくい」などという回答だ。
とはいえ現実として、それ以降に出た新型N-BOXにしろ、ウォークスルーは充分できるし、四駆設定もある。もちろん、N-BOXのほうが高さ的な余裕はあるかもしれないが、軽だけに前後スペースはフリードより余裕はない。でも、なぜN-BOXにできて、フリードはできないの?
勝手に予想すると難点はほかにもあり、スライドドア化するうえでボディフロア両端に頑強なフレームが必要となり、センタータンクレイアウトが難しいのかもしれない。もっと言うと、最近国内での側面衝突要件もどんどん厳しくなっており、ポール衝突に対する耐性を上げる必要もある。それもあってセンタータンクレイアウトがより難しくなっているのかもしれない。
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