軽本格スポーツの超傑作!! ホンダ ビートの色褪せない独創性 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ビート(1991-1996)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:HONDA


■数々の「初」が詰め込まれた画期的な軽スポーツ

 同門の初代ホンダNSXがそうであった「ミッドシップレイアウトの後輪駆動スポーツ」という成り立ちを、当時の軽自動車規格のなかで実現させた名作オープンカー。それが、1991年から1996年まで販売されたホンダ ビートです。

後輪は駆動輪であり、そのトラクションを受け止めるために、タイヤサイズを前輪に対して大きくしている

 車体中央にマウントされるエンジンは直列3気筒自然吸気のE07A型。これは自然吸気の軽自動車用エンジンとしては唯一、自主規制値であった64psをマークしたエンジンで、しかもその最高出力は8100rpmというきわめて高い回転域で発生します。

 そして組み合わされるトランスミッションは5MTのみ。数を売ろうと考えたならATは必須だったのでしょうが、ビートはあえてそこに背を向け、「本格スポーツ」の道を目指しました。

 そしてホンダ ビートは非常に革命的な軽自動車でもありました。なにせ「日本初」とか「世界初」が非常に多い車なのです。

 前述したミッドシップレイアウトを軽自動車に採用したのもビートが初めてで、そもそも「ミッドシップのフルオープンモノコックボディ」というのも世界初でした。

 さらに言えばSRSエアバッグを軽自動車に採用したのもビートが初です。

サイドビューはヘッドライトからリアフェンダーのエアインテークまでが直線的なラインでつなげられ、MRの証である大型エアインテークが強調されたデザインとなっている

 さらにビートのエンジンには、F1のテクノロジーも注入されていました。

 ターボチャージャーなどの過給器に頼らないナチュラルで鋭いレスポンスであること。そしてコンパクトスポーツとしての魅力を損なわない小型で軽量なエンジンであること。

 そういった課題を解決するために選ばれたのが、ホンダのF1テクノロジーを応用したハイレスポンス・エンジンコントロールシステム「MTREC(エムトレック)」でした。

 そのMTRECを核に、さらに数々の高回転・高出力化技術を注ぎ込んだことで、ビートならではの「伝説の超高回転型NAエンジン」は完成したのです。

 そんなこんなで素晴らしい一台に仕上がり、自動車愛好家からの人気は高かったホンダ ビートですが、いくつかの理由により1996年1月、残念ながら販売終了となってしまいました。

■現存率6割!! 30余年覚めやらぬその“熱”にホンダもサポートを表明

 人気を博したモデルであり、なおかつ前章でご紹介したとおり「作り」もかなり素晴らしかったホンダ ビートは、なぜ1代限りで生産終了となったのでしょうか?

ボディ剛性を確保するため、ピラーからピラーへパイプを通し、ボックス構造のフロアトンネルに。それに沿うようにインストルメントパネルの横のラインを強調し、コンソールの縦のラインを交差させている

 直接の理由は平成8年(1996年)9月の軽自動車規格変更と、それと前後して生じていた「スポーツカー人気の低迷」です。

 当初は堅調だったビートの販売台数ですが、とはいえ「2人乗りのミッドシップ軽自動車」というのはニッチ商品ですから、そもそもそんなにたくさんの数が売れる車ではありません。

 で、そこへきて1990年代中盤に巻き起こったのが「RVブーム」です。

 RVというのは「レクリエーショナル・ヴィークル」の頭文字で、その頃、今で言うSUVやクロカン四駆、ミニバンあたりがごっちゃになった感じの勢力が大人気となったのです。

 そして大人気となったRVの代わりに衰退していったのが、セダンと、ビートのようなスポーツカー、あるいはスペシャリティカーと呼ばれるクーペなどでした。

 そういった世の中の変化があったせいで90年代半ば、ビートの販売台数は大きく落ち込みました。そしてホンダには、軽自動車規格の変更に合わせてビートをモデルチェンジさせるという選択肢はありませんでした。

 なぜならば、やや出遅れていた「RV」の開発に注力することこそが、営利を目的とする企業としては正しい道筋だったからです。

 そうして、ホンダ ビートは惜しまれながらこの世を去りました。

バブル終焉後にその魅力が浸透、長く愛される名車となっていった

 しかし精魂込めて作られた、ナリは小さくても中身は「本物」だったホンダ ビートの命は、ある意味永遠です。

 ビートの総生産台数は3万3892台でしたが、その約6割、具体的には1万9759台が現存しているといいます(※2016年末現在)。

 これは国産車としては異例の数字で、「現存率7割以上」と言われているポルシェの数字にも迫るものです。

 そしてホンダも2017年夏、「ビートをより長く楽しんでいただきたい」というコメントとともに、一部純正部品の生産を再開しました。

 2015年に発売された「ホンダS660」がビートの後継モデルにあたるかどうかは諸説あるでしょう。でも、そこは割とどうでもいい議論です。

 とにかくビートという車は人々に愛され、そして、今なお愛され続けているのです。

■ホンダ ビート 主要諸元
・全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1175mm
・ホイールベース:2280mm
・車重:760kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、656cc
・最高出力:64ps/8100rpm
・最大トルク:6.1kgm/7000rpm
・燃費:17.2km/L(10モード)
・価格:138万8000円(1991年式ベースグレード)

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