「軽を超えた軽」!! 名車スバル ヴィヴィオの革新と価値【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル ヴィヴィオ(1992-1998)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:SUBARU、ベストカー編集部


■唯一のWRC優勝車輩出! 軽の質を引き上げたヴィヴィオ

 1990年代初頭までの軽自動車にはほとんど見られなかった「質の高さ」を徹底的に重視して開発された、局所的には「伝説」となっている軽自動車。それがスバル ヴィヴィオです。

 1970年代から90年代初頭まで販売された「比較的凡庸」と評してもおそらく間違いではないスバルの軽自動車「レックス」の後継として、ヴィヴィオは1992年に登場しました。

 登場時のキャッチフレーズは「シンプル・リッチ」。

 つまりヴィヴィオは、シンプルでありながらも「自動車としての質の高さを備えた軽自動車」という位置づけでした。

スバルは、ヴィヴィオによってこれまでの軽自動車のあり方にとらわれることのない「ドライバーズ・ミニセダン」という発想を提案した

 そのためサスペンションは前後ともストラット/コイルの4輪独立懸架方式を採用。ちなみに普通の軽自動車のサスペンションはリジットアスクル式(左右が1本の軸でつながっていて、連動して動く安価な方式)です。

 エンジンも、当時の軽自動車は(まあ今もそうですが)3気筒が常識であったのに対し、ヴィヴィオは商用グレードを除く全車に電子制御マルチポイント燃料噴射付きの直列4気筒を採用。

 さらにスポーツグレードのMT版には4バルブDOHCヘッドとインタークーラー付スーパーチャージャーを備えた高性能エンジンも設定しました。

 メインとなったグレードは前述のスーパーチャージャー付き高性能エンジンを搭載した「RX-R」で、こちらはなんと軽自動車で唯一「WRC(世界ラリー選手権)でクラス優勝を果たした」という、輝かしすぎるほど輝かしい実績を持っています。

DOHCエンジンを採用したホットモデル「ヴィヴィオ RX-R」

 全日本ラリーでは当初から活躍していたヴィヴィオでしたが、1993年にはサファリラリーに挑戦。

「軽自動車がWRCに出場」というだけでも快挙ですが、なんとスバルチームはパトリック・ジル選手が駆るヴィヴィオが見事完走し、「総合12位、そしてクラス優勝」という空前絶後の結果を残してしまいます。

 その後、いかにもスバルらしく何度もマイナーチェンジ(年次改良)を重ねながら進化を続けたスバル ヴィヴィオでしたが、1998年8月には軽自動車規格の改定にともなって生産終了に。

 そして同年10月には、後継の「プレオ」にバトンを渡す形で販売終了となりました。

■「もし規格が変わっていなければ?」そんな夢を抱かせる1台

 ヴィヴィオを開発した頃のスバルは、レオーネの時代にやや遅れをとっていた「走行性能」の部分を挽回すべく血眼になっていました。

 その結果として、WRCでクラス優勝も果たしてしまうヴィヴィオという名車が生まれたわけです。

 しかしそんな名車ヴィヴィオはなぜ、1代限りで生産終了となってしまったのでしょうか?

1998年1月に設定された3ドアミニセダン「ビストロ type S」。しかしこの発表の7ヶ月後、8月には生産が終了されることとなる

 その理由は、前章で少し触れた「軽自動車規格の改定」と、スズキ ワゴンRに代表される軽トールワゴンの台頭です。

 1996年9月に改定され、1998年10月から施工された新しい軽規格は「軽自動車にも普通車並みの衝突安全性を求める」というようなものでした。

 それに合わせて各社はやや大ぶりになった新しい軽自動車を作り、同時に、当時一世を風靡していたワゴンRに対抗できる「トールワゴンタイプ」に、軽自動車ビジネスの主軸を移していきました。

 そうして生まれたのが、ヴィヴィオのプラットフォームを利用して作られたスバルの軽トールワゴン「プレオ」です。

ヴィヴィオのプラットフォームを改良し、660ccの新規格に完全対応した後継車種「プレオ」

 しかしそれはそれとして、昔ながらのベーシックな軽自動車、つまりヴィヴィオのようなフォルムの軽自動車にも当時はまだ根強い需要がありました。

 そのため、スズキやダイハツあたりは「軽トールワゴンを作りつつ、そうでないやつも作る」という二面作戦を展開しました。

 しかし当時のスバルには、そういった二面作戦を展開するだけの余力はありませんでした。「どちらか一方」に経営資源を集中せざるを得ない状況だったのです。

 となれば、営利企業としては「今後、より売れそうなほう」を作り、「今後はたぶんあまり売れなくなるだろうボディタイプ」は整理してしまうのが“正しい経営”ということになります。

 そんな流れで、スバル ヴィヴィオという希代の名作は新車の世界から消えていきました。

 しかしスバル ヴィヴィオは、いや、その象徴的存在であったトップグレード「RX-R」は、今なおその中古車がけっこうな高値で取引されています。

「軽自動車ビジネス」においては敗れたスバル ヴィヴィオですが、その中身とスピリットは、長嶋茂雄さんじゃありませんが「永久に不滅」なのかもしれません。

■スバル ヴィヴィオ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1375mm
・ホイールベース:2310mm
・車重:710kg
・エンジン:直列4気筒DOHC+スーパーチャージャー、658cc
・最高出力:64ps/7200rpm
・最大トルク:10.8kgm/3600rpm
・燃費:18.2km/L(10・15モード)
・価格:113万8000円(1997年式RX-R)

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