■「もし規格が変わっていなければ?」そんな夢を抱かせる1台
ヴィヴィオを開発した頃のスバルは、レオーネの時代にやや遅れをとっていた「走行性能」の部分を挽回すべく血眼になっていました。
その結果として、WRCでクラス優勝も果たしてしまうヴィヴィオという名車が生まれたわけです。
しかしそんな名車ヴィヴィオはなぜ、1代限りで生産終了となってしまったのでしょうか?
その理由は、前章で少し触れた「軽自動車規格の改定」と、スズキ ワゴンRに代表される軽トールワゴンの台頭です。
1996年9月に改定され、1998年10月から施工された新しい軽規格は「軽自動車にも普通車並みの衝突安全性を求める」というようなものでした。
それに合わせて各社はやや大ぶりになった新しい軽自動車を作り、同時に、当時一世を風靡していたワゴンRに対抗できる「トールワゴンタイプ」に、軽自動車ビジネスの主軸を移していきました。
そうして生まれたのが、ヴィヴィオのプラットフォームを利用して作られたスバルの軽トールワゴン「プレオ」です。
しかしそれはそれとして、昔ながらのベーシックな軽自動車、つまりヴィヴィオのようなフォルムの軽自動車にも当時はまだ根強い需要がありました。
そのため、スズキやダイハツあたりは「軽トールワゴンを作りつつ、そうでないやつも作る」という二面作戦を展開しました。
しかし当時のスバルには、そういった二面作戦を展開するだけの余力はありませんでした。「どちらか一方」に経営資源を集中せざるを得ない状況だったのです。
となれば、営利企業としては「今後、より売れそうなほう」を作り、「今後はたぶんあまり売れなくなるだろうボディタイプ」は整理してしまうのが“正しい経営”ということになります。
そんな流れで、スバル ヴィヴィオという希代の名作は新車の世界から消えていきました。
しかしスバル ヴィヴィオは、いや、その象徴的存在であったトップグレード「RX-R」は、今なおその中古車がけっこうな高値で取引されています。
「軽自動車ビジネス」においては敗れたスバル ヴィヴィオですが、その中身とスピリットは、長嶋茂雄さんじゃありませんが「永久に不滅」なのかもしれません。
■スバル ヴィヴィオ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3295mm×1395mm×1375mm
・ホイールベース:2310mm
・車重:710kg
・エンジン:直列4気筒DOHC+スーパーチャージャー、658cc
・最高出力:64ps/7200rpm
・最大トルク:10.8kgm/3600rpm
・燃費:18.2km/L(10・15モード)
・価格:113万8000円(1997年式RX-R)
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