近年上がり続けている新車価格。ひと昔前ならワンサイズ上のクルマだって視野に入れられたのに……でもでも予算は上げられないし一体どうすればいいの? そんな人達にオススメなのがコンパクトSUVだ。そこで今回は、トヨタ、日産、ホンダの3社から選りすぐりのクルマ達をご紹介しよう。
※本稿は2024年4月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:平野 学
初出:『ベストカー』2024年5月26日号
■WR-V上陸でコンパクトSUV市場はどう動く!?
今のクルマは、安全装備や運転支援機能が充実する。好ましいことだが価格も高い。過去を振り返ると、1990年頃は、運転席エアバッグや4輪ABSが各15万円前後でオプション設定されていた。今は当時よりも安全装備が割安に装着されるが、値上げは避けられない。
その一方で所得は伸び悩むから、今も昔も、ファミリー層を中心に購入するクルマの価格を200~250万円に設定することが多い。
15年ほど前は、エクストレイルやRAV4の売れ筋グレードがこの価格帯に収まったが、今は350万~400万円に達する。ボディの拡大やハイブリッドの採用もあり、約15年間で150万円も値上げされた。それなのに所得は増えないから、小さな車種を選ぶ傾向が強まった。
そこで注目されるのが全長を4500mm以下に抑えたコンパクトSUVだ。特にWR-Vは、今の前輪駆動のSUVでは珍しく、ハイブリッドを用意しない純ガソリンエンジン専用車だ。最も安価なXは、実用装備を採用したうえで、価格を209万8800円に抑えた。装備の充実する最上級のZ+でも248万9300円に収まる。
しかも車内の広さは、ハイブリッドが中心で売れ筋価格帯を高めたヴェゼルと同等に広く、ファミリーカーとして使いやすい。つまりWR-Vは、ボディはコンパクトでも、機能と価格は250万円以下で購入できたミドルサイズSUVの再来だ。
ヤリスクロスは、後席が少し狭いが、純ガソリンエンジン車の売れ筋価格帯が190万~250万円だ。割安な価格が人気を得て、SUVの最多販売車種になった。
キックスはハイブリッドのe-POWER専用車で、上級仕様のみの設定だから価格は高いが、Xは300万円未満に収まる。
価格が250万円以下のSUVは、WR-Vを筆頭に売れゆきを増やすだろう。今後発売されるスズキフロンクスも楽しみだ。
■お買い得だけど走りや内外装のクォリティはどうか!?
純ガソリンエンジンの価格が250万円以下、ハイブリッドでも300万円以下では、豪華な内装は得られない。
WR-Vでは、インパネの上面は硬質の樹脂でメッキも控え目。サイドブレーキはレバー式で、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールが制約を受けた。追従走行時に停車した後、電動式と違って、サイドブレーキの自動作動ができない。そのために時速25kmを下まわると、クルーズコントロールが解除される。
ヤリスクロスとキックスは電動式だから、追従停車も可能だ。それでもWR-Vは車内に不満がなく、シートは骨盤を確実に支える。座り心地はベーシックなXが快適だ。Zと違ってシート生地に見栄えのいいプライムスムースは使わないが、伸縮性の優れたファブリックが体を柔軟に受け止める。
WR-Vの動力性能は、1.5Lの平均水準だが、4000回転を超えると速度上昇が活発になる。上り坂ではエンジン音が拡大するが、音質に不満はない。
ステアリング操作に対する車両の反応は穏やかだが、後輪の接地性は高く、危険を避ける時も安心だ。乗り心地は、Zは低速域で少し硬いが不満はなく、16インチタイヤのXであれば柔軟だ。前述のシートと併せてXはリラックスできる。
ヤリスクロスも内装に不満はない。インパネはWR-Vよりも立体的で、スポーティな引き締まり感が伴う。試乗車のZアドベンチャーは、運転席の電動調節機能を備えるが、スイッチを操作した時の反応が鈍い。座り心地は、もう少し座面の前側を持ち上げると姿勢が安定するが、背もたれの硬さは適度で疲れにくい。
ヤリスクロスの試乗車はハイブリッドだった。モーター駆動の併用で動力性能に余裕があるが、エンジンは1.5Lの直列3気筒だから、登坂路では粗いノイズが生じやすい。乗り心地にも粗さを感じたが、ステアリング操作に対する車両の反応は機敏だ。走りをスポーティに仕上げた。
キックスのインパネ周辺はオーソドックスなデザインだ。しかしe-POWER専用車とあって価格が高く、柔らかいパッドにステッチ(縫い目)の入った合成皮革を使うなど上質に仕上げた。運転席の座り心地も、腰から大腿部までしっかりと支えて満足できる。
e-POWERは、エンジンが発電、駆動はモーターが担当する。よってアクセル操作に対する反応は、電気自動車に近く機敏だ。乗り心地は硬めだが粗さは抑えた。
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