新車販売の大半を担うのは、メーカー系ディーラーですが、もう一つ、新車販売を行うのがサブディーラー。最近は数を減らしつつありますが、日本の自動車販売を支える、重要な役割を持っています。今回は、サブディーラーが自動車市場に与える影響や、その現在地についてみていきましょう。
文:佐々木 亘/写真:Adobestock(トビラ写真=J_News_photo@Adobestock)
■ディーラーとサブディーラーの違い
私たちがよく知る「新車ディーラー」は、メーカーとの直接契約を結んでいる販売店であり、一般的に新車の販売やアフターサービス等を行います。
一方、サブディーラーは既存の新車ディーラーや販売代理店と契約を結び、ディーラーからクルマを仕入れて販売する業態です。
自動車整備工場と併設されていることが多く、スタンスとしては、販売「も」行う整備工場。特定の顧客層や需要に特化した販売を中心に、地域に根差した経営が目立ちます。
■なぜサブディーラーは存在する必要があるのか
至るところで見かけるサブディーラーですが、「ディーラーがあるのに、なぜサブディーラーがあるのか?」と、疑問を抱く方も少なくないでしょう。
この疑問は、至極もっともな話ですが、サブディーラーには、サブディーラー独自の役割があるのです。一般的な新車ディーラーとの仕組みの違いから、特別な役割を考えていきます。
まずは、価格設定。サブディーラーには、新車販売に関する設定価格の縛りがありません。
メーカー系ディーラーから仕入れた新車に上乗せする金額(つまりは利益)は、サブディーラーの裁量で決めることができます。そのため、同車種を扱う正規ディーラーより、安く新車が買えることも珍しくありません。
また、サブディーラーは複数メーカーの新車を取り扱っていたり、特定の市場や顧客層に焦点を当てた販売を行っていたりします。
正規ディーラーの少ない地域では、サブディーラーの存在意義がとても高く、地域の需要に応じて、販売戦略や在庫を調整する柔軟性を兼ね備えています。
これが、サブディーラーの存在意義であり、メーカー系ディーラーにはない独自の役割と言えるでしょう。
■サブディーラーの現状と今後の展開
近年、自動車業界ではマーケットの多様化や少子高齢化による販売台数の減少、自動車メーカーによる不正問題などさまざまな問題を抱えています。特に、記憶に新しいダイハツ工業による認証不正問題は、日本の自動車の根幹を揺るがすものとなりました。
ダイハツ問題では、サブディーラーも深刻な影響を受けた場所の一つです。価格競争や顧でサービスの向上などで、サブディーラー同士が競い合っていたなかでの突然の新車出荷停止は、顧客離れに繋がり、大きなダメージを受けました。
現在は供給網が復活し、サブディーラーでの販売も戻ってきています。
ただし、今なお「クルマの安全性が心配だ」「今乗っているクルマを売りたい」「今注文しているクルマをキャンセルしたい」などの声が、サブディーラーにも寄せられているのが現状です。
仕入先がメーカー系ディーラーとなるサブディーラーは、こうした問題が起きた際に、製造を行うメーカーへ直接物申すことが難しい立場にあります。メーカーは、自分たちのクルマを、日本の隅々まで行き届かせているサブディーラーを、もっと大切にするべきだと思うのです。
近年、人口減少やデジタル化の加速により、ディーラーの統合が加速しています。地域によっては、ディーラーがない場所も増えているのが現状です。
特に、過疎化の進む地域の人にとって、クルマの購入だけでなく、故障や修理点検などのために遠く離れたディーラーまで行くこともしばしば。こうした人たちを支えているのがサブディーラーであり、地域に密着したサブディーラーはその街に住む人たちにとって欠かせないお店なのです。
一般的なディーラーとの違いを知り、自分にとってディーラーが合うのか、サブディーラーが合うのかを考えてみるのも楽しいかもしれません。意外と、サブディーラーのアットホームな雰囲気は、中毒性があってハマってしまう人が増えるかも。
日本の自動車販売業界の中で、毛細血管のような役割を担うサブディーラー。クルマが起こす好循環は、サブディーラーの働きなしには語れません。
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