2024年5月、アメリカ・フロリダ州にて世界初公開された、フェラーリの新たなフラッグシップモデル「12Cilindri」(ドーディチ・チリンドリ)。そのまま「12気筒」という意味を持つ車名に、フェラーリの自信がうかがえる。FR12気筒の新たな歴史を創造する12チリンドリをご紹介する!!
※本稿は2024年5月のものです
文:渡辺敏史/写真:奥隅圭之
初出:『ベストカー』2024年6月26日号
■電動化一切なし!「12気筒」の名を冠するモデル
SF90ストラダーレや296GTBなど、ミドシップ系では昨今の時世も鑑みPHEV化を進めてきたフェラーリ。はたして自らの歴史の出発点でもあるFR12気筒のラインナップにはいかなる手を施してくるのか、さまざまな噂が囁かれていた。
が、蓋を開けてみれば現われたのは電動化一切なし、無添加の12気筒を搭載するモデルだ。その名もズバリ12気筒を意味するイタリア語「12Cilindri」というから洒落が効いている。ちなみに発音は「ドーディチ・チリンドリ」と、日本人が口にするのはちと難儀しそうだ。
12チリンドリが搭載する12気筒はF140HD型。F140系は、F40、F50といった限定モデル=スペチアーレの系譜として2002年に発売されたエンツォ用に開発されたユニットに端を発し、21世紀の12気筒フェラーリを支えてきた。
65度バンクのショートストローク型ユニットは当初6Lだったが、現在は6.5Lに拡大。12チリンドリではムービングパーツの軽量・高剛性化を筆頭にさまざまな手が加えられ、前任の812スーパーファストに30ps上乗せした、実に830psのアウトプットを9250rpmで発揮する。
レッドゾーンは9500rpmと、量販モデル=ストラダーレとしては異例なまでの高回転・高出力型だ。
■FR12気筒の新たな世界を切り開く
いかにもFR12気筒的なロングノーズのプロポーションは12チリンドリの個性を決定づけるもの。そのフロントまわりは365GTB/4デイトナの前期型をオマージュしたことは、現物からも伝わってくる。
対してリアまわりはルーフからリアガラス、トランクリッドとその両脇に備わる可動式のスポイラーまでブラックアウトした、チーフデザイナー曰くのデルタウイングモチーフが配され、その印象は斬新だ。
12チリンドリは812スーパーファストからさらに20mm縮められたホイールベースに加えて、実は近代フェラーリの十八番でもあるダイナミクスの統合制御にも6軸センサーを用いた新しいパラメータを採用している。
eデフや4WSのみならず、ブレーキ・バイ・ワイヤとの連携による運動性能の向上は、FR12気筒の新たな世界を見せてくれるだろう。
12チリンドリの現地価格は約40万ユーロ=6500万円。高嶺の花であることは間違いないが、その存在自体が内燃機関の頂点を極める一端であると思えば、納得させられる。
●Ferrari 12 Cilindri 主要諸元
・全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm
・ホイールベース:2700mm
・乾燥重量:1560kg
・エンジン:V12 DOHC
・総排気量:6496cc
・最高出力:830ps/9250rpm
・最大トルク:69.1kgm/7250rpm
・トランスミッション:8速DCT
・最高速度:340km/h
・0-100km/h加速:2.9秒
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