日本ではメジャーなトランスミッションであるCVT。軽自動車や小型車を中心に多くの車種で採用されている。しかし、輸入車に目を向けてみるとCVTを採用している車種が見当たらない。その理由はどこにあるのか? 日本車にCVTが多く輸入車に少ない理由を紹介していく。
文:西川昇吾/写真:スバル、AdobeStock ほか(トップ画像=fandistico@AdobeStock)
■CVTの特徴と強み
CVTが日本車に多い理由は、CVTの特性を事前に知っておくと理解がしやすい。
「無段階変速」と言われるCVT。ギアを用いらずにベルトの摩擦力によって動力を伝えている。内部が円すい状となっているプーリーを入力側、車軸側でそれぞれ閉じたり開いたりすることでベルトの直径を無段階に変化させているのだ。
ベルトの直径を変化させることは、通常のギアで言えばギア比を変化させることに該当する。これがベルトの直径を無段階に変化させるので、無段階変速と呼ばれるのだ。
エンジンはトルクバントやパワーバンドと呼ばれる回転域がある。トルクやパワーなどが優れている理想的な回転域が存在するのだ。CVTやAT、MTやDCTなどのトランスミッション(変速機)が存在する理由の1つが、この回転域を適切に使うためと言える。
CVTは無段階変速と言われると述べたが、CVTならばあらゆる速度に対して理想的な回転域を持ってくることが出来る。
燃費的に理想的な回転域なのか? 加速性能的に理想的な回転域なのか? それは制御次第で自由自在とも言える。加減速が多く、細かなギアチェンジを必要とするシーンで無段階変速なCVTは理想的な回転域に合わせられ、シフトチェンジが不要という強みを発揮するのだ。
■CVTの弱点は?
あらゆる速度でも理想的な回転域に出来るのであれば、輸入車にも広く採用されてもいいのでは? という意見もあるだろう。確かに幅広い回転域に合わせられる変速機と聞くと理想の変速機と思えるだろう。しかし、CVTにも苦手な部分はある。
まず伝達効率が他のトランスミッションに比べると優れていない。そのため一定速度で走行するシーンでは、加減速に強いCVTのメリットが活かされない。
また、無段階変速なCVTであっても変速幅には限度がある。プーリーとプーリーの距離によって変速幅は物理的に決まってしまう。現実的に高い速度域は苦手ということになる。そしてハイパワー&ハイトルクにCVTは対応が難しいという面もある。
■CVTは日本の道路環境に合っている
このようなCVTの強みと弱みを理解していくと、自然と日本車に採用が多く輸入車に採用が少ない理由が見えてくる。日本の一般道はストップ&ゴーが多いため加減速が多い。このような状況の中で優れた燃費性能を実現するために、小型車ではCVTが最適なトランスミッションと言える。
反対に日本に輸入車として入ってくることが多いヨーロッパ車の生まれ故郷では、高速道路などでの定速移動が多く、速度域も高い。CVTにとって苦手でメリットが出せない環境であることが多いのだ。
かつてヨーロッパ車も小型車でCVTが採用されたことがあった。しかし、そこから普及されなかったことを考えると、ヨーロッパの自動車メーカーにとってCVTに取り組むだけのメリットが得られなかったということだろう。
CVTは面白くないという声もあるかもしれないが、近年はスポーツCVTなどモータースポーツで速さを得るために採用されている部分もある。CVTは道路環境も大きく影響しているが、日本の自動車技術の高さが実現したメカニズムの1つとも言える。
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