クルマに対する印象や感じ方は人によってさまざま。そこが「クルマ評価」の面白いところだ。では、複数の自動車評論家に一台のクルマを評価してもらったらどうなるだろう? というわけで、ここでは三菱 トライトンを三名の自動車評論家のみなさんに試乗&評価していただいた!!
※本稿は2024年5月のものです
文:片岡英明、渡辺陽一郎、山本シンヤ、ベストカー編集部/写真:三菱、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年6月26日号
■世界を走ってきた三菱のノウハウが結集
2023年7月にワールドプレミアされ、日本では2024年2月より販売を開始した三菱 トライトン。同車の特徴といえば、なんといっても世界のあらゆる道を走って得てきたノウハウが随所に活きていることだろう。
新設計のラダーフレームは操安性と乗り心地を両立させたほか、三菱独自の4WD“スーパーセレクト4WD-II”と新開発ディーゼルターボエンジンのおかげで、深雪路や泥ねい地でも道を選ばない、比較なき走破性を有している。
本誌では4月26日号にて河村大氏が試乗。まるでパジェロのような楽しいピックアップとした。その他にも大勢の評論家がトライトンに試乗しているので、今回は片岡英明氏、渡辺陽一郎氏、山本シンヤ氏のお三方の評価を聞いてみよう!
●三菱 トライトン(GSR)諸元表
・全長×全幅×全高:5360×1930×1815mm
・ホイールベース:3130mm
・車両重量:2140kg
・エンジン形式:2.4L 直4 DOHCディーゼルターボ
・最高出力:204ps/3500rpm
・最大トルク:47.9kgm/1500-2750rpm
・WLTCモード燃費:11.3km/L
・価格:540万1000円
■使い勝手よし! パワフル! 乗降性のよさはSUV顔負け!(片岡英明)
正式発表の前からキャンペーンを展開していたこともあり、知名度は高い。無骨さに引かれる女性ファンも意外に多いようだ。だが、ボディサイズは大柄で、山間部や都市部の狭い道路では持て余すこともあるだろう。その不安を前後に装着されたカメラが上手にフォローしてくれる。
乗り込んで驚かされたのはドライビングポジションがヘタなSUVより乗用車的だったことだ。運転席がパワーシートだったことにも驚かされた。また、乗降性に関してもステップに足を乗せれば小柄な人でも乗り降りに苦労することはないだろう。
大幅に改良した2.4L・DOHCディーゼルは、2ステージターボの採用と相まって鋭く過給し、低回転から豊かなトルクを発生する。余裕あるパワーを秘めているが、加速時にちょっと耳障りなノイズを発生するのが弱点だ。
舗装路で存在感が際立っているのはフルタイム4WDの4Hモード。巧みに前後の駆動力配分を行い、2WDのように滑らかな走りを楽しめる。当然、オフロードでの走破性能は超の付く実力だ。電動パワステの操舵の洗練度もトラックレベルを超えている。
魅力的だが、1年車検だし、高速道路の通行料金も高くなるのが惜しいところ。
●片岡氏採点チェック
・ハンドリング:9点
・加速性能:8点
・静粛性:6点
・内外装の質感:7点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:6点
■三菱のDNAが随所に光るトライトンから逆転劇が始まる!(渡辺陽一郎)
2023年の国内メーカー販売ランキングで、三菱は最下位だった。メーカーの技術力とディーラーの販売力は優れているが、新型車に恵まれない。軽自動車とOEM車を除くと、設計が比較的新しい車種はアウトランダーだけだ。
しかも三菱のブランドイメージは、長年にわたり悪路向けSUVのパジェロが支えてきたのに、すでに廃止され、最近は副変速機を備えた悪路に強い車種がない。三菱の存在感も薄れ、売れゆきが下がって当然だ。
その意味で久々の新型車になるトライトンは重要だ。価格が実質500万円以上のピックアップで、全長は5.3mを上まわり、最小回転半径も6.2mに達する。
日本にまったく適さないが、野性的なフロントマスクと優れた悪路走破力は、パジェロが支えていた三菱車の伝統をわかりやすく表現している。オジサン世代には懐かしく、若い人達には新鮮だ。
トライトンの登場で「三菱ってわかりにくかったけれど、こういうクルマを造るメーカーなんだね」と腑に落ちた人も多いだろう。
いろいろあった三菱が、ようやくスタート地点に立てた。しかも今はSUVの人気が高く、EVやPHEVも注目されている。すべて三菱の得意科目だから、今後は上に登るだけだ。応援してるぜ、三菱!
●渡辺氏採点チェック
・ハンドリング:6点
・加速性能:5点
・静粛性:3点
・内外装の質感:7点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:3点
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