ポルシェにかぎらず様々なクルマにレストモッドを手掛けているオランダのKCパフォーマンスが、最後の空冷911である993のドライブトレーンをPDKトランスミッションにするメニューを用意している。オリジナルの水平対向空冷6気筒エンジンはそのまま使うというその内容をチェックしてみたい。
文:古賀貴司(自動車王国)/写真:ベストカーWeb編集部
■空冷911にPDKを積むという試み
「高出力な古い911のMT車は、毎日の足にはしにくい」。そう語ったのはKCパフォーマンスの共同創業者である、カジミール・フォン・ホイドンク氏。だから週末のツーリングには使うが、普段はガレージに置きっぱなしにされがち、というのが世界的な空冷911の実情なのだそうだ。
そこに着目したのがネオクラシックカーへのZF社製の8速AT載せ替えで既に経験を積んできているKCパフォーマンス。ポルシェの優れた最新のデュアルクラッチトランスミッションを空冷911に組み合わせようと考えた。
■もちろん993のPDK移植は簡単ではない
ただ、PDKへの載せ替えは一筋縄にはいかない。エンジンとPDKトランスミッションを結合するアダプタープレートを独自に設計・加工する必要があるのだそうだ。
フォン・ホイドンク氏によれば3D CADデザインソフトに精通したエンジニアがいれば設計自体は可能だが、実際にアルミ部品を作るのに十分な精度のCNC加工ができるところは多くないのだという。
また、KCパフォーマンスではクランクシャフトポジションセンサーを内蔵した新しいフライホイールと、電子制御スロットルボディも取り付けているという。
スロットル自体はポルシェの部品だが、ペダルはE90世代のBMW 3シリーズからの流用だ。同社はBMWとも取引があるため、BMWの豊富なパーツカタログを熟知しているからできた技だろう。
■空冷911のPDK化、気になるお値段は?
そのほか、当該993のエンジンには最新の燃料噴射装置と電子制御イグニッションを装着し、新たに複数のセンサーを装備している。
アフターマーケットのECUを搭載することで、エンジン出力特性とトランスミッションの変速タイミングも、柔軟性も大幅に向上させている。
さらに「コンフォート」や「スポーツ 」のスロットルマップを作ることもでき、現行911のようにスムーズに、もしくはGR3 RSのようにガツガツとシフトチェンジさせることも可能だという。
現在は930ターボのPDK化のプロジェクトも進んでおり、その車両にはBMW M3(E43型)のABSシステムも搭載される予定だそうだ。なお、PDK化(ECUのマッピング含む)コストは約5万ユーロだそうな…。
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