認証不正問題はなぜ起こる?「現場」を知る開発者の声

不正は不正、メーカーには正確に行う義務があるが、難しい作業であることは確か

 豊田章夫会長の「不正はなくならない」という発言の真意は、おそらく自動車メーカーの立場として、現状の制度では国交省が求める内容を100%そっくりそのまま行うことは難しい(なんらかの理解の違いが起きる可能性が否定できない)、ということなのだろう。理解の違いがなくても、ダイハツの事案でもわかるとおり、試験で問題が発覚した際、そこで開発の手を止めることで莫大な損害が発生してしまうことも考えると、同様の不正が行われるリスクは残り続けると考えられる。

 特に衝突実験は、重要な試験でありながら、量産車のプロトタイプが出てくる開発の後半でなければ行うことができない試験だ。ここでエラーが発覚した際に、立ち止まってじっくり考えて対策を打つような現場を実現できるかというと、自動車開発の現場にいた一人としては、それが許される状況ではないといわざるを得ない。

 ただもちろんだからといって、不正は仕方がなかったとは思わない。メディアやジャーナリストの中には、国土交通省の試験目標が時代に即していない(海外の試験との共通化が遅れている)、合理的な考え方にアップデートされていないなど、国の目標設定の甘さを指摘する声は少なくないが、それも確かにそうかもしれないが、筆者は、国が決めた目標値には、何らかの背景があるはずであり(ないかもしれないが)、その背景を上書きできる新たな背景の検証が行われない限り、たとえ性能的に上回るものであっても、独自の判断で「よし」とすることはやはり浅はかだったように思う。国土交通省によると、海外の自動車メーカーのほとんどが、今回の国土交通省による調査・報告の指示に対して「不正はなかった」と回答している。

 どんな職場でも、合理性を追求することは確かに必要なこと。ただそれは、いつも誰にとっても正義であるとは限らない。難しい作業ではあるのだが、国の認証試験を任された以上、自動車メーカーには正確に行う義務があった。不正による新車の出荷停止は、楽しみにしていたユーザーを悲しませること。やはり自動車メーカーとしての罪は重いと筆者は思う。

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