どんな車にも必ず付いている「ホーン」。クラクションを鳴らすという表現があるように、街なかでさまざまなホーンの音色を耳にすることも多いだろう。
その音色に耳を澄ませると、実はホーンの音が車種によってかなり違うことに気付かされる。
大まかな傾向としては、軽自動車やコンパクトカーなど低価格車のホーンは、擬音で表現すると「ピー」という単音、輸入車を含めた高級車は「ビー」と存在感(ともすれば威圧感)のある和音に聞こえる印象が強い。
なぜ車によってホーンの音色は違うのか? その秘密に迫る!
文:永田恵一
写真:Adobe stock、ミツバサンコーワ、編集部
ホーンの仕組みに秘密あり! 車によって“音色”が違う訳
なぜ音色が異なるのか? これは大きく「平型」と「渦巻き型」の2つに分かれるホーンの構造によるところが大きい。
ホーンが鳴る原理はごく簡単にいうと、内部にあるボールとシャフトが触れあった音を共鳴させて増幅(大きく)するというもの。
音の共鳴は、平型は薄い空洞となる共鳴板(レゾネーター)、渦巻き型は厚い空間となる共鳴管(カーリング)で行っており、共鳴の違いがホーンの音の違いの大きな要因になっている。
そこにホーンの数が1つ(シングル)、2つ(ダブル)なのかという要素も大きく絡み、総合的な音の違いとなって現れる。
また、平型と渦巻き型の長所と短所を挙げてみると……
■平型ホーンの長所と短所
【長所】
・コストが安い
・取り付けが省スペースで済む
【短所】
・音が機械的になりがち
■渦巻き型ホーンの長所と短所
【長所】
・響きがあるなど音に高級感や重厚感があり、音をチューニングできる幅も広い
【短所】
・コストが高い
・取り付けに必要なスペースが大きい
このように長所と短所は対照的で、平型は小型車や低価格車、渦巻き型は高級車や高額車に向いていることがわかる。
このあたりを総合すると「輸入車を含め高級車や高額車ほど、ホーンの音が良い」と感じられる傾向にも納得できるだろう。
ホーンの「音量」や「音質」に決まりはある?
ホーンの音量・音質は、法規で定められており、大まかなには以下のように定められている。
【音量】
・車の前方7mで、87dB(デシベル)以上112dB以下
【音質】
・音量、音色は一定で連続するもの
そのため、今時はさすがに見かけなくなったが、暴走族が付けていることのあったゴッドファーザーのメロディ、サイレンや鐘、音を切り替えられるホーンは公道では違法となる。
「愛車のホーンの音が気に入らない」などと交換する際には、現在販売されているものはパッケージに“保安基準適合”などと記載されていることが多く、違法なものはあまり売られていない。
公道で使うのが違法であれば“公道使用不可”などと記載されているので、あまり心配することはないだろう。
ドイツ車は高級な音?? 車によって異なるホーンの個性とこだわり
ホーンの音を聞くと、車によるこだわりや個性が見えてなかなか面白い。
例えば、ドイツ車はベンツ、BMW、ポルシェはもちろん、フォルクスワーゲン(VW)でも充分高級と感じられるな音がし、コストをかけていることが伺える。また、フェラーリのホーンは“笛の音”と言われ、音階の高い音が特徴的。
また、ルノーやプジョー、フィアットといったフランス、イタリアのコンパクトカーのホーンは、ハードウェアのコストが高そうな決して高級な音ではないが、ユーモラスな音で、「コストが掛けられない分はチューニングでカバー」という心意気を感じる。
(余談だが、フランス車のホーンは20年ほど前までウインカーレバーの頂点に付いていることも多いのが特徴的だった)
日本車はホーンの音と車格の関係がドライで、レクサス車やアルファード、クラウンといった高級車になれば、ホーンも高級な音になる傾向なのだが、マツダは2やCX-3(渦巻き型シングルホーンを採用)だと、前述のフランス車、イタリア車のようなユーモラスな音で、3以上になると高級な音になる。
対照的にスバルは、プレミアムカーを目指した4代目レガシィで高級なホーンを採用し、「普段見えないところもシッカリやってるな」と感心したものだが、大きな実用車に路線をかえた5代目レガシィ以降は普通のホーンに変わってしまい、細かいところながらコンセプトの変化を痛感した。
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