イタリアが誇る老舗自動車会社「ランチア」から、イプシロンの13年ぶりのモデルチェンジが発表された。しかも驚きなのが合わせて、イプシロンでのラリー界復帰も発表されたことだ。ストラトスやデルタを擁したあの名門がラリーに帰ってくる! 期待に胸を膨らませて早速見ていこう。
※本稿は2024年7月のものです
文:木村好宏/写真:ステランティス
初出:『ベストカー』2024年8月10日号
■先代から13年ぶりの一新!
ステランティスグループにはマセラティやアルファロメオ、そして日本でも人気のジープなど14のブランドが存在する。
今回紹介するランチア イプシロンは、同グループ内のアルファロメオと同じプレミアムグループ内のランチアが、10年計画で進めているルネッサンス(復活)におけるもっとも象徴的なニューモデルである。
イプシロンにはICE搭載モデルとBEVが用意されており、そのICEプラットフォームはプジョー 208やオペル コルサなどのBセグメントモデルと同じCMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)、BEVバージョンはe CMPを採用している。
イタリアのデザインセンター(チェントロ・スティーロ)で誕生した斬新な5ドアハッチバックボディは、アイコニックなフロントマスク、そしてリアエンドはかつてのラリー専用モデル「ストラトス」に似た丸形テールライトが印象的である。
インテリアは、イタリアン家具工房のカッシーナの息がかかったスタイリッシュでハイエンドな空間が演出されている。ただし、使用されている材質が量販家具店レベルなのは残念だ。
重量1584kgのボディに搭載されているパワートレーンはプジョー e208と共通で、156馬力/26.5kgmを発生する電気モーターがフロントを駆動する。公式データでは0-100km/hが8.2秒、最高速度は150km/h、最大403kmの航続距離(WLTP複合モード)と発表されている。
また、同じボディで154馬力を発生する1.2LのmHEV(マイルドハイブリッド)ターボエンジンと6速のeCVTを搭載したICEモデルも用意されている。
■スポーティな味付けが上質な走りを生む
今回のテストではBEVを選択。走り出した感触は約1.6トンの重量にもかかわらずEVらしくキビキビした動きで、路面からのショックも少なく、同じプラットフォームを持つプジョー e208よりも上質だった。
またステアリングフィールはスポーティな味付けで、切り始めからダイレクトにノーズがスッと望む方向へ向かう。
アウトストラーダの進入路からドライブペダルを踏んでいくと、BEV独特の鋭い加速であっという間に100km/hに達するが、それ以上は緩慢となり150km/hでリミッターが入る。
それ以外ではプレミアムなランチアのコンパクトBEVモデルとしては期待どおりの仕上がりだった。
こうした魅力が、イプシロンが今までランチアブランドでイタリアを中心とした欧州市場において長く生きながらえた理由だと思う。
なおドイツでの価格は3万4000ユーロ(19%の付加価値税込みで約575万円)からと発表されている。日本での発売に関してステランティスジャパンからの発表はまだ行われていないが、ランチアブランドの認知度が低いうえにBEV需要の伸びが期待されないわが国での販売は難しいかもしれない。
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