2024年8月1日、ホンダと日産・三菱は、戦略的パートナーシップ検討の覚書を締結した。環境対応技術、電動化技術、ソフトウェア開発などの領域での3社協業を、幅広いスコープでの検討・協議を進めていくという。
ビッグメーカー3社による協業では、それぞれの技術のシナジー(相乗効果)が期待できるが、だからこそ、それぞれの「らしさ」が重要になってくる。では「日産らしさ」とはどういうものか、日産自動車で12年間エンジニアとして勤務していた筆者が考えてみた。
文:吉川賢一/写真:NISSAN、HONDA
いかに差別化できるかは、日産の今後を大きく左右
ホンダの2023年度四輪グローバル販売台数は前年比7.8%増加の410万台。営業利益は5,606億円、営業利益率は4.1%だ。一方の日産は、2023年度グローバル販売台数が前年比4.1%増の344万台。営業利益は5,687億円、営業利益率は4.5%。ホンダは二輪事業が世界トップのシェアを誇るが、四輪事業においては、両社ほぼ同規模となる。
日産は、2016~2018年の販売台数550万台超の時代と比べると、2023年度は40%近く減少している。特に足元の日本市場を見ていると、新車発表の波に乗るトヨタに対し、日産は新型車を1年以上も出していない。ホンダとの協業で、ホンダに飲みこまれることはまずないだろうが、協業によっては、ホンダといかに差別化できるかは、日産の今後を大きく左右することになると考えられる。
「ユーザーがカーライフを楽しめるクルマをつくる」のが日産らしさ
日産の内田誠社長兼CEOは、かつて毎日新聞のインタビューで「日産らしさ」について、「いろんなお客様に喜んでいただけるクルマを造れる会社が日産だと思っています」と語っていた(毎日新聞:日産・内田社長「失った日産らしさ必ず取り戻す」より)。
たしかに日産には、GT-RとフェアレディZという2つのスポーツモデルをいまもラインアップしている。経営が厳しい中、趣味性が強いクルマを2つも維持し続けることはかなり厳しいことだろうが、こうしたクルマを提供し続けることが日産らしさを取り戻すことに繋がると、内田社長は考えているのだろう。
思えばかつて日産には、ユニークなクルマがたくさん存在した。「パイクカーシリーズ」として知られる、パオやフィガロ、エスカルゴなどがいい例だ。マーチをベースにつくられたこれらのクルマは、30年以上が経過するいま再び注目されている。ほかにも、キューブやジュークなど、時代を代表するような個性的なモデルが数多くあった。海外市場を重視したことなどによって、日本人のためのクルマづくりができなくなったことも要因だろうが、経営が厳しくなったことで、効率を求めた結果、徐々にそうしたクルマが少なくなっていた。
ただ、協業によって、今後はそうしたユニークなクルマをつくる余裕も生まれるかもしれないし、このところ新車が出せていなかった国内専売車にも、新風を吹かせることができるようになるかもしれない。現在はセレナ、ノート(ノートオーラ)、サクラの好調に支えられているが、ホンダとの協業によって、ぜひとも日産らしさ全開のユニークな国内専売モデルが登場することを期待したい。
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