2019年10月にJAFが発表した、今年8月15日~8月29日にかけて行った「信号機のない横断歩道において、横断しようとしている歩行者がいる際のクルマの一時停止率の調査」によると、都道府県によるバラつきも大きいが、一時停止する率は全国平均でわずか17.1%と低かった。
2018年にも同様の調査が行われた際の全国平均が8.6%だったので、改善はしているが、その数値はいまだに低い。
つまり「日本人は信号機のない横断歩道に歩行者がいてもほとんど止まらない」という結果なのだが、当記事ではこの調査結果をきっかけに信号機のない横断歩道がある際の交通法規や取締り、現実を踏まえた運転の仕方などを考えていく。
文/永田恵一
写真/Adobe Stock、編集部
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■信号機がない横断歩道がある道での注意点
●交通法規で「信号機のない横断歩道において、横断しようとしている歩行者がいる際のクルマの一時停止」はどうなってる?
この点については道路交通法38条の「横断歩道における歩行者優先」で、
『横断歩道に近づいた車両は横断する歩行者がいないことが明らかな場合のほかは、その手前で停止できるように速度を落として進まなければならない。さらに横断歩道を横断しようとする歩行者があるときは横断歩道の直前で一時停止し、かつその通行を妨げないようにしなければならない』
と定められている。
このことは、運転免許を取る際にしっかり教えられるが、その時の状況によるところもあるにせよ、そもそも忘れているドライバーも少なくないのだろう。
●「横断歩道における歩行者優先」を守らないとどんな交通違反になる?
「横断歩行者等妨害」という違反になり、違反点数は2点(酒気帯び0.25mg以下の場合は14点、酒気帯び0.25mg以上の場合は25点)、反則金は普通車9000円、大型車1万2000円、バイク7000円が科せられる。
取締りの実績は、2018年度交通取り締まり件数を見ても「横断歩道における歩行者優先」という違反は取り締まり件数の上位10項目に入っていないなど、それほど多くないようだ。
しかし、冒頭のJAFの調査結果が発表された直後の2018年10月23日に、警察庁交通局から「信号機のない横断歩道における歩行者優先等を徹底するための広報啓発・指導の強化について」という通達が出されている。
通達によると、日本は欧米に対し歩行中の交通事故死者の占める割合が高いこと、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催で歩行者優先が定着している外国人の来日の増加も考慮し、「信号機のない横断歩道における歩行者優先等」の広報啓発、違反者に対する指導の強化の必要性が記されている。
実際ここ半年ほど、テレビCMや取締りではない注意による「信号機のない横断歩道における歩行者優先等」の広報啓発を見ることもあった。
こういった告知のような活動が行われたのに加え、今月(2019年10月)の東京都の公開取締りの内容を見ると都内一円で「横断歩行者妨害違反の取締り」が含まれており、今後(すでにのほうが正しいだろうか) 「横断歩行者等妨害」は重点的に取締りが行われる交通違反になる可能性は高いのではないだろうか。
●どのように運転することが必要なのか?
当然ながらドライバーは交通弱者である歩行者を守る意味も含め、白で菱形がペイントされた30mから50m先にある横断歩道の予告(すべての道路にはないにせよ)も情報にしながら、信号機のない横断歩道での減速やそこに歩行者がいれば一時停止をするのが大原則だ。
この菱形のマークから横断歩道までの間は、歩行者がいないことが明らかな場合を除いて減速義務があり、違反すると「横断歩行者等妨害」と同じ罰則が適用される。
だが、JAFでは冒頭の調査の前年(2017年6月)に「ドライバーが一時停止しない(できない)と考えられる理由」をインターネットアンケートで調査した結果、上位3つに
「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから」(44.9%)
「後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから」(41.1%)
「横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから」(38.4%)
という意見が入っている。
確かに対向車、歩行者との意思の疎通、「横断歩道内およびその手前30mは追い越しや追い抜きが禁止」という交通法規はあるにせよ、「自車の左右にバイクや自転車がいて、もし一時停止した自車の陰から現れるように歩行者と接触したら」という想像が働くことや、歩行者が交通量を見て横断歩道を渡るタイミングを考えてくれている場合だってあるだろう。
こういった点も踏まえ信号のない横断歩道での一時停止を総合的に考えると、必ずしも一時停止するのがベストとも言い切れないように思う。
信号のない横断歩道でのベターな行動を考えれば、車両は前後左右をよく見ながら横断歩道で止まれるように進む、歩行者も周りとの折り合いを考えながら横断したい際には手を挙げてその意思を伝え、車両が止まったら再度周りをよく確認して横断するというあたりだろう。
法整備や取締りも大事だが、信号のない横断歩道に限らずそんなことがなくても道路を使う人全員が周りに気を使うことで、安全が確保される交通社会を目指したいものである。
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