■「スーパースポーツに新しい価値を与えたホンダの傑作」ホンダ・NSX
1990年9月、国産車初の本格スーパースポーツカーが誕生した。それがNSXだ。
スポーツカーとして多くのメリットを持つミドシップレイアウトを軸に、世界初のオールアルミモノコックボディを採用。4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションも構成部品のほとんどをアルミ化することで、さらなる軽量化を達成している。
さらに、搭載される新開発の3リッターV6ユニットもコンパクト設計で軽量化に貢献しつつ、VTEC機構により低中速域から高回転域まで谷間のない出力特性と優れたレスポンスを実現したのである。
もちろん、見るものを魅了するスタイリングも特徴で、イメージしたのは超音速小型ジェット機。前進キャノピーデザインがミドシップであることをボディ全体で主張しているのだ。
NSXのストロングポイントは、ハイパフォーマンスを実現しながら広い視界や快適な居住空間、大容量のラゲッジルームなどを備え、扱いやすさが光った点。スーパースポーツながらあくまでも人間優先という考え方は、それまでのライバル勢にはなかったものだった。
そして、タイプRの追加やマイナーチェンジなどを行い、約15年にわたって販売。2005年には生産終了となり後継も発表されなかったが、2016年にハイブリッドスーパースポーツとして復活。再び脚光を浴びることになった。
とはいえ、国産初のスーパースポーツとして誕生した初代は特別。バブルが産んだホンダのマスターピースなのである。
■「3ローターエンジンに先進装備 超バブリーなマツダの古豪」ユーノス・コスモ
1989年にマツダが敷いた5チャンネル体制。そのなかで、プレミアムブランドというポジションで開設されたのがユーノスだ。
同店では、ロードスターをはじめ、500や800、さらにはシトロエンも販売していたが、いかにもバブリーなとびっきりのスペシャルティクーペがコスモだった。
ロングノーズショートデッキのフォルムは堂々としたサイズで、欧州のプレミアムクーペと比べても見劣りしない美しさと存在感を放つ。
あくまでも2+2の室内は、斬新なデザインを取り入れ先進性を表現。CCS(カー・コミュニケーション・システム)と呼ばれるGPSナビは、世界初の装備だ。
そして、コスモの最大の特徴がエンジンで、20B-REWと13B-REWの2種を搭載。前者は量産車世界初の3ローターロータリーで、シーケンシャルツインターボシステムを組み合わせることで280ps/41.0kg-mという自主規制上限の最高出力と国産車屈指のビッグトルクを発揮。
さらに、V型12気筒エンジンに匹敵する極めて滑らかなフィーリングと、クイックなアクセルレスポンスも実現したのである。
その一方、燃費性能はお世辞にも優れているとは言えなかったが、そういったネガもおかまいなしというのがいかにもバブル期っぽい。
コスモは、実用性や経済性に重きを置いた現代では考えらないほど贅沢なスペシャルティクーペだった。
■「スバルのアイデンティティが詰まったグランドツアラー」スバル・アルシオーネSVX
開発資金が潤沢だったバブル期には、スバルも新たなフラッグシップを開発。それがアルシオーネSVXだ。
車名からアルシオーネの後継ということは明白だが、目指したのは本格グランドツアラーで、先進のメカニズムが積極的に投入された。
まず、斬新なスタイリングに目を奪われるが、これはG・ジウジアーロが手がけたもの。ジェット機のキャノピーを連想させるラウンドキャノピーが特徴で、ダイナミックなブリスターフェンダーやエアロテールデッキはルックス的な要素だけでなく、空力性能にも大きく貢献している。
インテリアもグランドツアラーらしく、長距離移動でも疲れの少ない居住空間を実現。広いグラスエリアが高い開放感を演出し、人間工学に基づいたスイッチや目に優しい照明がドライビングの負担を軽減してくれるのだ。
そして、優れた運動性能やロングツーリングでも疲れにくい快適性を実現するのが、スバル自慢の水平対向エンジンと4WDシステム。
エンジンは、当時のスバル市販車最大となる6気筒3.3リッターのEG33。ターボではなく自然吸気を選んだのは、繊細でリニアなアクセルレスポンスと低回転からトルクフルな特性を重視したため。
駆動システムは、不等&可変トルク配分電子制御4WDのVTD-4WDを採用。さらに4WSも装備し、どんな環境下においても最高のパフォーマンスを安定して引き出せるようにしている。
デビューはバブル崩壊後だが、華やかな時代を感じさせるスバルの意欲作なのだ。
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