「異端の中型トラック」キャンターEX! 電動化で劇的にユニークそしてイイ走りのクルマへ変貌した!

「異端の中型トラック」キャンターEX! 電動化で劇的にユニークそしてイイ走りのクルマへ変貌した!

 「キャンター」といえば、三菱ふそうの積載量2~3トンクラスの小型トラックだが、その豊富なラインナップには、あまり知られていないマイナー車型もある。そのひとつが、中型トラックに匹敵する車両総重量8トンモデル「キャンターEX」である。今年3月、そのEVバージョンの「eキャンターEX」が発売されたが、それはさらにユニークな価値をもったトラックだった。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/「フルロード」編集部、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス

小型トラックベースの「局地型」中型カーゴ

EXの「ワイド拡幅キャブ」。ドアとリアピラーのブリスターフェンダー形状は、自工会の自主規制(キャブ・荷台間の段差を片側50mm以内・形状により片側100mm以内)への対応である
EXの「ワイド拡幅キャブ」。ドアとリアピラーのブリスターフェンダー形状は、自工会の自主規制(キャブ・荷台間の段差を片側50mm以内・形状により片側100mm以内)への対応である

 キャンターのラインナップでも、「キャンターEX」は特異なモデルである。それは、車両総重量(GVW)8トン車型(FEC90型)用のフレーム組幅850mmシャシーに、ワイドキャブの全幅をさらに125mm拡大した「ワイド拡幅キャブ」をマウントして、中型トラック標準幅車と同じ「全幅2320mmの荷台」が架装できるというユニークさを持つためだ。

 その目的は、重量の軽い小型トラックをベースとすることで、排ガス規制や安全対策の強化のたびに積載量が漸減しているGVW8トン中型トラック(三菱ふそう「ファイター」、いすゞ「フォワード」、日野「レンジャー」など)、俗にいう「4トン車」の代わりとして、それ以上の、あるいは従来と同等の積載量を狙ったものである。

 例えばキャンターEXと、現行「4トン車」シェアNo.1であるフォワードFRRの標準幅ショートキャブの荷台長6.2mウイング車同士で比べると、荷台内法長・内法幅は同等で、EXは内法高のみ少し低い。積載量は、フォワードFRRの2.95トンに対し、EXは3.5トン前後を確保する。ちなみに10年前のフォワードFRRは3.05トン積めた。

 そのかわりキャンターEXは、キャブが小型でサスペンションはリーフのみ、エンジンは175PSの3.0リッター直4ディーゼルという仕様から、基本的には平坦な地域での近距離輸送を前提としている。いわば「用途限定局地型」の異端な中型トラックというわけだ。

軽比重カサモノ輸送で使えるGVW8トンEV

eキャンターEX。型式はFED9K型。ホイールベース4750mmの超超ロングボディ・Lバッテリー(高電圧バッテリー×3個)というシャシーのみを設定する。荷台長は中型カーゴの定番サイズ・6.2mクラスで、このモデルの狙いがうかがえる
eキャンターEX。型式はFED9K型。ホイールベース4750mmの超超ロングボディ・Lバッテリー(高電圧バッテリー×3個)というシャシーのみを設定する。荷台長は中型カーゴの定番サイズ・6.2mクラスで、このモデルの狙いがうかがえる

 キャンターEXは、軽いシャシーで現行中型以上の積載力を狙ったトラックだが、今回の本題である「eキャンターEX」はそうではない。それは、軽いシャシーによって初めて成立が実現した、現時点で唯一の「GVW8トン中型クラスEVトラック」である。

 「4トン車」は、小型トラックと違って電動化が困難なクラスと考えられてきた。すでに中型ウイング車の積載量確保が厳しいことを述べたが、これをEVにするとさらに重くなり、荷台のスペースはあっても、もはや採算の合う積載量にはならなくなってしまう。

 もちろんeキャンターEXも、カタログ諸元(ホイールベース4750mm・超超ロングボディ・平ボディ架装)の最大積載量は3.05トンで、ディーゼルEXの4.45トンに対して、差し引き1.4トンも積載量が減少している。それでも長さ6.2mの荷台が活かせる3.05トン積みを確保できるのは、小型トラックベースだからこそだろう。
 
 荷台長6.2mのウイングボディ架装では、eキャンターEXは積載量2.1~2.2トンほどを確保できるとみられる。現行の中型ウイング車をも下回る数値は決して自慢にならないが、ウイング車の主用途のひとつである軽比重カサモノ(=重くはないが容積の大きい積荷)輸送に特化して、EXの狙いでもある近距離運行に充てれば、中型ウイング車を代替しうる能力でもある。しかもその走りは、従来のEXにはない新しい価値をもたらすものだった。

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