クラシックカーというものの定義はいろいろとある。
もちろん戦前のクルマもそのカテゴリーに入るのだが、近年は196o年代~1970年代までのクルマをクラシックと呼ぶことも多いようだ。
そんなクラシックカーオーナーたちの悩みの種といえば部品だろう。輸入車、国産車限らず、必要な部品がなければ修理もできない。
ましてやタイヤとなるとなかなかリプレイス品の生産も難しく、エンジンはかかるけど走れないなんて問題に直面する。
なかには新車時オリジナルのスタイリングを維持するために、装着から10年以上たっているなんてオーナーも。
そんなタイヤで悩んでいたオーナーにベストカーWebは出会った。なんと20代にして50年以上前のフォルクスワーゲン・ビートルを維持しているSさんだ。
1966年式のお父さまの忘れ形見を愛でる彼の1日を追った。
文:ベストカーWeb編集部/写真:池之平昌信【PR】
※今回の取材車両はクラシックカーのためシートベルトが当初より装備されていません。道路交通法のシートベルト装着義務の適用外になります。
■父からの贈り物を維持するということ
湘南エリアと言われる神奈川県茅ケ崎市。サザンオールスターズの桑田佳祐氏の故郷としても有名なこの地に、23歳の若きビートルオーナーがいるという。
しかも愛車ビートルは1966年式の「ヤナセ物」とよばれる貴重なモデル。フォルクスワーゲン・ビートル Type1の正規輸入車だ。

そんなオーナーSさんの愛車は実は亡きお父さまの忘れ形見。だからこそ愛車への思いは人一倍強い。
まさに「一生もの」なクルマ。だからこそ普段からメンテナンスは欠かさず、常に快調に走らせられる準備をしている。
エンジンはノーマルの1300ccから1776ccへと換装し、ビートルでは定番ともいえるチューニングを施す。
当日は生憎の雨交じりの天候だったがお気に入りの休日の過ごし方に密着させてくれた。

「海が身近な湘南育ちなのであまり”海に行こう!!”と意気込んで行くことはないんです。でもたまに海の音や匂いを感じたいというか。キザですかね(笑)」。
爽やかな好青年をお手本に描いたようなSさん。ドライブで立ち寄った茅ケ崎の海岸は生憎の雨模様だが笑顔を絶やさない。
しかし愛車のコンディションには敏感なのはさすがクラシックカーオーナー。当日は雨雲もあり湿気が多く、ご本人曰く「キャブの吹け上がりがイマイチです」。
「生きてるって感じるんですよね。クルマなんですけど、人間と同じで呼吸してて。そんな”生”の感じがこのビートルにはあって。今日は雨でダルイって言ってるのかなーとか」。

若者のクルマ離れなんてどこ吹く風。かなり強い意思を持ってビートルと触れているSさん。
午前9時から取材を始めてかれこれ2時間。あふれ出てくるクルマ話に華が咲いてしまった。
そのなかで担当の関心を惹いたのが最近苦労した整備ポイント。なんとタイヤだという。
■国産タイヤが旧車の未来を救ってくれる?
「なんせタイヤといったら輸入品しかなくて。しかも納期不明とか、手元に来たら製造年が古かったり。
サイズが大丈夫なタイヤは国産メーカーにもありますが、全体の雰囲気を崩す最近のタイヤはちょっと……」。

そこで目に付いたのがヨコハマタイヤのG.T. SPECIAL。
メンテナンスを任せるショップのメカニカックが「懐かしいなー。G.T. SPECIALの広告はかっこよかったんだよ」と教えてくれた。
ところがG.T. SPECIALは元はといえば国産クラシックカー用のイメージ。オーナーのSさんも不安はあった。
「タイヤのグリップが勝っているとボディや足回りへの負担が来るじゃないですか。
それってこの年式だと致命傷になりかねないんです。だからちょっと怖さもあったんですけどね。結局それは心配しすぎでした(笑)」。
もちろんサーキットなどで無理な運転をすればボディへの負担は大きくかかるものの、あくまでも一般道をツーリングで走るには快適度アップで大満足だそう。
「論より証拠でちょっと助手席に乗ってドライブをご一緒しませんか? ランチにおすすめのハンバーガーがあるんですよ」。
向かった先は茅ケ崎市内のハンバーガーショップ「BY THE WAY(バイ・ザ・ウェイ)」。ここでハンバーガーをガブリと食らう。

店内にあった1966年特集の音楽雑誌を読みつつ、1966年式の愛車を愛でる。24歳にしてかっこよすぎるぞ。
注文したゴルゴンゾーラ・ベーコンバーガーを食べつつ、本日のツーリングルートを構想する。

「あっ、平日なので横浜中華街でタピオカでもどうですか?」。
時々見せる発想が若いことに安心する。担当はかつてのナタデココブームを思い出したことは胸にしまっておこう。
■高速道路でも市街地でも安心感が高い!!
自動車専用道路である横浜新道を通りいざ横浜へ向かう。70km/hの法定速度まで一気にビートルは加速する。
さすが1776cc!! 現代のクルマとなんら変わらない走りにちょっと驚く。
とはいえ、ご機嫌斜めの雨雲のせいで路面は湿潤。クラシックカーでも怖くないのだろうか……。

「以前はこういう自動車専用道路なんかを走ると少し怖さもあったんです。特に車線変更とかは。
でもG.T.SPECIALは”ズルズル”って感じがなくてビターっと走るんですよね」。
”ババババババァッ”という雄々しい空冷サウンドを奏でながら、クリーム色のかわいいカエル顔が走る。
首都高速に入る。横浜のみなとみらいが見えてきた。
半世紀以上前のクルマと近未来的な横浜エリアの対比はちょっとジーンとくるものがある。
まさに文明開化を告げた横浜の街だからこその感情だろう。ここはいっちょ、牛鍋でもいくかと思ったが今回はタピオカだ。これも文明開化。

ビートルは市街地での走りもスムーズ。交差点を曲がるのもスーッと引っ掛かりがない。こんなに普通に旧車を走らせるには多くのメンテナンスが必要だ。
「部品供給は比較的恵まれているクルマなんですけど、やっぱり予告なしにいきなり壊れる。根気と分厚い財布(笑)が必要ですね。
今回装着したG.T. SPECIALは性能的には満足ですがサイズ展開がもう少しあるといいなって。
車高やフェンダーとの隙間などお気に入りのスタイリングって旧車にはありますからね。まあ贅沢を言えば、って感じですが」。

中華街で買ったタピオカを飲み干し、情緒豊かな元町でウィンドウショッピング。オシャレも好きな24歳はなにか買わないのだろうか?
「うーん、ほしいものはあるけどやっぱりビートルの部品ですね。同じお金使うなら」。
やはり根っからのカーガイのようだ。きっとお父さまも天国でニッコリ、だろう。
【ヨコハマタイヤ G.T. SPECIAL CLASSIC Y350】
今回の撮影で使用したタイヤはヨコハマタイヤのG.T.SPECIAL CLASSIC Y350。
オールドミニに最適な145/80R10をはじめ、今回使用した165/80R15など全4サイズを設定。

まもなくクラシックカー用のタイヤとして復活予定だが、全国のクラシックカー好きには朗報とも言える復活だろう。
かつて日本を席巻した「G.T.SPECIAL」を名乗るだけでなく、現代の技術で安全性も向上。
クラシカルな外観で1960~1970年代のクラシックカーの足元を支える。
詳細は公式サイトからどうぞ!!