■ジープの神髄とは
今回、2日間にわたってジープイベントを堪能したわけだが、ここで改めて感じたジープの神髄に迫ってみたい。
ラングラーは先代のJK型の時代から一貫して国内で安定した販売台数を記録し、コロナ禍による在庫不足と、それに続く急激な円安による価格上昇によって現在は一時的な落ち込みをみせているが、それまで販売台数は10年以上右肩上がりの傾向をみせ続けた。
多くの乗用車は発売直後に最もよく売れ、徐々に鮮度を失い販売台数が下がっていくが、ラングラーはこれに当てはまらない稀有な存在だ。
年月を経ても販売台数が落ちない理由はいくつかある。まずは圧倒的に魅力的なスタイルとキャラクターをもったモデルであること。ラングラーを筆頭に、7スロットグリルと台形フェンダーによってどのモデルもひと目でジープとわかるほか、モデルチェンジしても大きくスタイリングが変わらないので、自分のクルマが現行モデルではなくなっても残念な感覚がほとんどない。
また元々先進性を売りにしていないため、古くなっても色褪せることがないし、燃費がよくないこともネガにならない。インポーターはその魅力にあぐらをかくことなく、定期的に特別仕様、特別カラーの限定車を投入し、鮮度が落ちない努力を続けている。
そして今回のキャンプジープのように大小のリアルイベントを実施し、オーナーのブランドへのロイヤリティを高める努力を続けている。実際、今回インタビューしたオーナーのほとんどが今乗っているジープの前にもジープに乗っていた。
当然、圧倒的に高い悪路走破性をもっていることは大前提だ。ラングラーがモノコックおよび四輪独立懸架全盛のこの時代に、ラダーフレームシャシーと前後リジッドアクスルを守り、高い悪路走破性だけでなく頑強で高い信頼性を維持していることは、オフロード走行愛好家はもちろん、実際に悪路を走行しない都市生活者にとっても、象徴的なブランドの魅力としてオーナーの心のよりどころとなっている。
またラングラーシリーズのみならず、多くのモデルが「トレイルレイテッド(トラクション性能、渡河性能、機動性、ホイールアーティキュレーション<四輪接地性>、ロードクリアランスの各項目で一定のスペックを誇るモデルに与えられる称号)」を獲得していることも、悪路走行において“ジープにしとけば間違いない”というオーナーの安心材料となっているのは間違いない。
燃費重視、エコ重視の世の中だが、そうした項目でも及第点を取りつつ、タフなクルマが欲しいと考える人の受け皿としてジープな貴重なブランドだ。
ステランティスジャパン打越晋(すすむ)社長は「国内の本格的なジープイベントは実に4年ぶりでしたが、200台以上のジープと1000人以上のオーナーの皆さんが参加してくださり、あらためてジープ人気を実感しております。
他の多くのブランド同様にジープも今後電動化を推進していきますが、オフロード走行体験でも実感していただけたと思いますが、電動化によって悪路走破性はむしろ向上しています。
つまり電動化によってジープらしさが失われる心配はまったくありません。今後、年に1、2モデルのペースで新しい電動ジープをお届けできると思います」と今後の見通しを語った。
正直に言えば、クルマのイベントでは所有者のお父さんは楽しそうでも一緒に来た家族は退屈そうなケースもあるが、キャンプジープに参加したオーナーファミリーの誰もが笑顔で過ごしていたのが印象的だった。
1941年にアメリカ軍のリクエストに応えるかたちで誕生したジープが、82年の時を経て平和の象徴のような存在になっているのは実に興味深い。
先行き不透明な自動車業界だが、ジープブランドはこの先クルマがどう進化しようとも安泰なのではないかと、イベントの最後に参加したジープが一列になってコンボイ走行し、スタッフが「また来年」と手を振って見送る光景を見てそう感じた。
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