ルノー・トラックスは2025年に長距離輸送用のバッテリーEV大型トラックを発売すると発表した。ボルボグループに属する同社はコンポーネントの共通化を進めているが、ボルボは既に同様の発表を行なっている。
新型車でBEV大型トラックの航続距離は600kmに達するが、ルノーはスペック競争には否定的で、BEVトラックに重要なのは「用途に合ったバッテリーサイズを選択すること」だという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks
2025年からルノー・トラックスの「Eテック T」は航続距離が600kmに
ルノー・トラックスは2025年下半期に大型バッテリーEV(BEV)トラック「Eテック T」のモデルレンジを拡大し受注を開始する。1度の充電による航続距離は600kmとなり、長距離輸送の脱炭素化に向けて新しい展望をもたらすという。
同社の電動トラックは、これまでに累計3000万kmを走行しているといい、CO2削減量に換算すると2万9000トンに上るそうだ。新たに長距離輸送用のBEVトラックをラインナップに追加することで、運送会社のエネルギー移行をサポートするソリューションをさらに拡大する。
Eテック Tの大幅な航続距離延伸は、新しいコンポーネント、とりわけ新型eアクスル(電動アクスル)によって可能になった。BEV駆動技術の中心的なコンポーネントであるeアクスルは、パワートレーン系の要素を組み込んだ車軸で、駆動軸として車両のリアに装着する。
モーターやトランスミッションなどをコンパクトにまとめたeアクスルは、中央に配置したモーターがプロペラシャフトを介して後軸を駆動するセントラルドライブと比べて、シャシーのサイドメンバー周辺のスペースに大きな余裕ができる。
このスペースにバッテリーパックを追加することで、eアクスル版のEテック Tの航続距離は600kmに達する。
同社の副社長で電動モビリティを担当するエマニュエル・デュペレー氏は、プレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「このBEVトラックの登場により、電動モビリティへの移行が加速するでしょう。1充電当たり600kmという航続距離は、2026年までに整備される予定の公共充電ネットワークと組み合わせることで、お客様が期待しているディーゼル車とのパリティ(同等性)を実現します。弊社は合弁会社のマイレンスとして充電インフラの整備も進めています」。
既存の製品ラインを補完するオファー
より航続距離の長いEテック TはBEV製品のラインナップを強化するため、長距離輸送向けに新たに設計したもので、現行のレンジ「T」ディーゼル車など既存のソリューションを置き換えるものではない。
同社は今後も様々な用途に合わせた機器を提供し続けるとともに、運送事業者が個別のニーズに基づいてBEVトラックを構成できるように、高度なシミュレーションツールも提供する。
いっぽうで同社は、メーカーがバッテリー搭載量によって航続距離を競うような「スペック競争」には否定的で、デュペレー氏は次のように強調している。
「私たちは1充電当たりの航続距離を競うつもりはありません。大きすぎるバッテリーは、トラックでは(その重量が)積載量と相殺されるため、運用性を損ないます。(バッテリーの価格により)運行コストが高くなり、(バッテリー自体の環境負荷により)環境フットプリントも大きくなってしまいます。
電気自動車は、本質的に内燃機関車より高価なので、私たちは『低炭素物流』を再考する必要があります。すなわち、輸送用車両の利用を最適化するパターンを考えることで、貨物の移動距離当たりのコストを減らさなければならないのです」。
ルノー・トラックスは顧客に対して、実際のニーズに合わせてバッテリーサイズを決定することを推奨し、そのために充電戦略を含めた最適化ソリューションも提供している。同氏によると、このアプローチにより既存のEテック T量産車でも一日当たり700kmの航続距離を達成しているそうだ。
航続距離が600kmに達する新型車は、2025年の下半期に受注を開始し、同社のハイエンド電動レンジを2023年より組み立てているフランスのブール=カン=ブレス工場で製造する予定だ。
【画像ギャラリー】ルノーの電動大型トラックを画像でチェック!(7枚)画像ギャラリー