車両の電動化で必然的に必要となるのが「充電器」だが、その設置のために駐車スペースの20%が失われる可能性があるらしい。ただでさえ駐車場の不足に悩む大型トラックにとっては死活問題だ。
電動化による駐車スペース不足を解決するため、フランス企業がEVトラック用の「アンダーグラウンド」ソリューションを開発した。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kempower
フランス企業がトラック用の地下充電インフラ開発
フランスのクリーンエネルギーインフラの専門企業、プロビリディスが、運送業界の電動化を支援するべく画期的なトラック充電設備を開発した。
EV用のDC急速充電ソリューションを開発しているフィンランドのケンパワー(Kempower)のフランスにおけるパートナー企業であるプロビリディスは、ケンパワー製の機器による独自の「アンダーグラウンド」ソリューションを設計した。
充電用ハードウェアを地下に設置することで地上スペースを確保する必要がなくなり、大型車にとっては死活問題となっている駐車スペースを現状のまま維持できるという。
運送会社やトラック向けのサービスを提供する企業にとって、大型車を駐車できるスペースの不足は深刻な問題で、これは日本に限らず世界各国で共通している。広大な国土を誇る米国でさえ大型車駐車場は足りていないほどだ。
いっぽうで、車両の電動化が進むと必然的に充電器の設置も必要となり、駐車可能なスペースがさらに減ってしまうという課題がある。地下化によってこの問題を解決可能だと考えた同社は、サン・カンタン・ファラヴィエのトラックステーション設置プロジェクトを通じて地下充電インフラを開発した。
全体コストも削減可能?
地下にセットアップしたケンパワーの制御ユニットは、近くにある600kWのパワーユニット(こちらは地上設置)と接続され、電力を受け取っている。地下に設置することでハードウェアの損傷も少なくなるそうで、パワーユニット1基から最大8台の充電器に電力を割り当てることができる。
現在、欧州でEVトラックを導入している多くの運送会社は地上に設置した構台から充電器を吊り下げる「ガントリー」型ソリューションを採用しているが、台数が増えればスペース不足が深刻化するのは明らかだ。
従来型の充電器を設置した場合、駐車場の最大20%は充電インフラのために割り当てられ駐車可能なスペースが失われるが、プロビリディスの地下ソリューションはスペースを犠牲にする必要がない。地下化により「電動化によるスペース問題」を初めて解決したほか、全体のコストを下げることもできるという。
ケンパワーの充電器・制御ユニットと互換性があるため、場所ごとに様々なレイアウトや特定のニーズに基づいて柔軟に構成することができ、パイロット事業をベースに既にクライアント向けのカスタム構成も開発されているそうだ。
温度条件等の耐久性に優れたケンパワーのユニットは、地下へのセットアップにも適しており、トラック意外にも大型バスなども車庫のスペースに制限があり、優れたソリューションとなる可能性がある。
同社では試験運用のあとフランス全土にこのソリューションを展開する予定で、土地に余裕がない日本でも「アンダーグラウンド充電」がトレンドになるかもしれない。
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