日野チームスガワラは決して諦めなかった!
トランスファが三たびトラブルに見舞われ、コース上で立ち往生。「もはやこれまでか! 」と思われたものの、チームは一丸となって不屈の闘志を燃やし、トラブルをリカバリー!
こうして日野チームスガワラのHINO600は、最終ステージのスタート地点に立ったのだった!
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/日野自動車・A.S.O.
メカニックの頑張りにも拍手!! 日野チームスガワラ、待望のゴールポディアムへ!!
1月17日、ダカールラリー2025はサウジアラビア南東部のシュバイタで最終日の競技を行ない、その後同地のビバークでゴールセレモニーを開催。
トラック部門にHINO600で参戦した日野チームスガワラは前日より順位を一つ上げて同部門の13位の成績でゴールし、日野自動車のダカール参戦活動は1991年の初参戦以来となる連続完走記録を34に伸ばすこととなった。
シュバイタは「エンプティクオータ」と呼ばれるルブ・アルハリ砂漠の一端に位置し、柔らかい砂の砂丘群が延々と続く。サウジに舞台を移したダカールは大会のハイライトとして毎回同地に難易度の高いステージを設定。今大会でも終盤の3連戦がシュバイタ基点のループコースで行なわれた。
とりわけ16日の行程の内容は厳しいものだったが、砂丘を得意とする菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組は大型のライバル勢に対し2~6番手で快走。ところがゴールまで20㎞のところでまたもトランスファに不具合が発生し、砂丘の頂きで動けなくなった。
他のエントラントに平地までけん引してもらったあと、乗員は機転を利かせてその場で自力でトランスファを外し、トランスファ~前軸用のプロペラシャフトをギアボックスに直接繋ぐことで後輪駆動化。無事砂丘からの脱出に成功した。
その後、SSを終了したHINO600はリエゾン(移動区間)の舗装路で合流したチームのアシスタンストラックに牽引されて24時頃にビバークに帰着した。
メカニックたちは鈴木誠一が中心になって再び破損したトランスファ内のセンターデフやオイルポンプなどを徹夜で修復。3度目のトランスファ修復は残っている部品もかなり限りがあることに加え、ビバークに帰ってきた時間も遅かったため出走時間との勝負でもあった。
日本からは現地時間に合わせて、データ解析など多岐にわたって連日連夜サポートを行なった。その甲斐あって、HINO600は無事最終日の競技に出走した。
この日のステージはビバークからリエゾンで東に70㎞移動し、そこから62㎞のSSでビバークへ戻り、ポディアムに登壇する。スタートでは2輪車は15台、4輪は5台づつの一斉スタートが切られた。
距離の短い最終ステージといっても路面は砂丘越えがほとんどで、スタックのリスクも高い。HINO600は修復されたトランスファによりパートタイム4WDとして同区間に臨み、無事4輪部門123位、トラック部門13位でゴール。これにより累積順位を4輪総合97位とし、トラック部門13位の順位を確定した。
ビバークの一角に設営されたゴールポディアムにHINO600が登壇したのは午後7時過ぎ。乗員とチームスタッフは壇上で観客の声援に手を振って応え、2週間の競技が終了した。
【日野チームスガワラのスタッフのコメント】
菅原照仁
今回の参戦にあたり、ご支援や応援をしてくださった方々に感謝申し上げます。最後のSSはそんな気持ちで走りました。いろいろなことがありましたが、トラブル対応では寒い中メカニックさんたちが頑張ってくれたりと、チーム全員にとって良い経験になったと思います。
染宮弘和
昨晩は残り20㎞でトランスファが壊れてスタックしてしまい、タイムはオーバーしている上に、タイムコントロールも既に閉まっていました。主催者に確認のうえ、修復後は直接舗装路に出て帰還しました。今回は後半にトラブルが集中し、メカニックの皆さんが懸命に対応してくれたおかげで、何とか完走することができました。チーム全体の総合力が確実に上がっていると感じています。
望月裕司
昨晩は大変でしたが、ビバークに戻ってからもメカニックさんたちの頑張りでギリギリ修理が間に合い、出走できました。自分は日野自動車の社員ですが、今回も難しい状況の中でダカールの活動を継続させてもらい、感謝しています。
門馬孝之
いろいろありすぎたダカールラリーでしたが、みんなが元気にゴールできて本当に良かったです。もうダメかと思うような場面もありましたが、最後まで諦めずに乗り越えられたのは、チームワークのおかげだと思います。
鈴木誠一
前半戦はラクでしたが後半は大変でした。トランスファは現在のローレンジを常用するような使い方に対してトルク容量が不足しているのかも知れません。
良川幸司
トランスファのトラブルは3回目のときは部品もないし、かなり厳しかったです。ゴールできてほっとしました。充実感が大きいダカールラリーでした。
柏谷壮一郎
現場にはすぐに慣れて仕事は問題ありませんでしたが、雨の夜は寒くて大変でした。後半戦は忙しかったです。
邵相権
休息日あたりから忙しくなり、これがダカールラリーなのだと改めて実感しました。トランスファ(のトラブル)にはじまりトランスファに終わった感じです。
上原智史
想像していたよりダカールラリーの現場は過酷でした。良かったことも悪かったことも含めて一生に一度の経験だと思います。本当はノートラブルで走り切りたかったです。
安藤瑠美
ビバークでは強い風や寒さ、雨もありましたが、我々のトレーラは断熱性能が高く快適でした。大変な中でトレーラが活躍したダカールでした。
毛塚麻由美
ここシュバイタは砂漠の真ん中で電波環境が悪く、昨夜は現場と連絡が取れなくて一時はどうして良いのかわからない状況でした。経験を今後に活かしたいと思います。
近内舜
トラブルで苦労しましたが、メカニックさんたちのすごさを感じました。昨晩は救援にも行って貴重な経験ができたと思います。