果して本当にビジネスチャンスがあるかどうかは不明だが、このところ日本市場への参入を目指す海外のEV貨物車の登場が相次いでいる。
これまでは中国製のEV貨物車を導入するファブレス企業が多かったが、先の「ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)」には、中国BYDの「T35」、韓国キアの「PV5カーゴ」がお披露目され、いよいよメーカー本体が動き出した印象だ。
そして、もう1社、日本市場への参入を目指しているメーカーがある。中国の小型トラック市場でシェアトップを誇る北汽福田汽車(福田汽車、FOTON)である。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
FOTONとトラックオーコクの人となり
「JMS2025」と同時期に開催された「ジャパントラックショーin富士スピードウェイ」でお披露目されたのが、中国小型トラック市場でトップクラスのシェアを誇る北汽福田汽車(福田汽車、FOTON)のEVトラックである。
1996年設立されたFOTONは、北京に本社を置き、これまでに全世界で累計1100万台以上を販売した世界有数の商用車メーカーで、バンやバス、小型・中型・大型トラックを取り揃え、内燃機関のほか、EVトラック、EVバンにも力を注いでいる。
そのFOTONと手を携え、日本市場での販売を担当するのが、株式会社トラックオーコクだ。
トラックオーコクは、幅広い商用車の買取・販売を提供する商用車専門オンラインプラットフォーム「トラック王国」を運営しているが、トラック業界におけるSDGsなどの観点から今後EVトラックに対するニーズが高まることを見越して、日本での販売に踏み切ったという。
FOTONは、全額出資子会社として日本福田自動車を設立しているが、トラックオーコクはその日本福田を介して日本市場でEVトラックを販売。気になるサービスネットワークは、センコーやヤマトオートワークスなど全国76カ所の整備工場と提携し、さらに故障やトラブル時のロードサービスも24時間対応を謳っている。
小型EVトラック「eオウマーク」とは?
今回のEVトラックは、いわばFOTONの世界戦略車で、すでにさまざまな国々で販売されている。仕向け地によって車名が若干異なるが、日本では「eオウマーク」と呼ぶようだ。ちなみにオウマークは漢字表記で欧馬可、英文表記で「AUMARK」である。
日本市場向けのボディバリエーションは、中国で架装する完成車のアルミバンと平ボディに加え、裸シャシーも用意される。
主要諸元は、ホイールベース3360mm、車両寸法5960×2060×2260mm、車両総重量6000kg、シャシー重量2470kg、最大積載量3500kg。日本向け完成車の最大積載量は平ボディ3050kg、バン2650kgほどとなりそうだ。なお、免許区分でいうと準中型である。
車両サイドのホイールベース間に2基搭載される駆動用バッテリーは、総容量81.14kWhのCATL製リン酸鉄リチウムで、1充電走行距離は173km(WLTP)。充填時間は、急速充電(DC)で1.3時間、普通充電(AC)で11時間になる。
駆動用モーターは永久磁石同期式で、プロペラシャフトを介しリアアクスルのデファレンシャルギアへ接続するセントラルドライブ方式で搭載される。モーターの定格出力/ピーク出力は60kW/115kW、ピークトルクは300Nmだ。
先進安全装備に関しては、横滑り防止装置、前方衝突予報警報、車線逸脱警報、衝突被害軽減ブレーキ、車両接近通報装置などが装備される。
なお、eオウマークをベースとしたとみられる車両としてZOモータースの「ZM6」が日本市場に導入されている。ただ、ZOモータースはファブレス企業であり、「ZM6」は製造委託した独自製品と位置付けているようなので、FOTONの製品を子会社の日本福田汽車から直接仕入れているトラックオーコクとは路線が異なるようだ。
トラックオーコクでは、納車までのリードタイムと次回の電気自動車の補助金申請の関係から本格販売を来年4月からと定めており、さらなる体制づくりに勤しんでいる。


