エネルギー効率の高い他のソリューションも
ZEVが一夜にして普及するわけではない。従って、他のエネルギー効率の高いソリューションについても提案されている。その一つが「EMS(ヨーロピアン・モジュラー・システム)」だ。
EMSは北欧(スウェーデンとフィンランド)のEU加盟時に、両地域の車両規制の違いから導入されたもので、貨物モジュールの組み合わせを規定するものだ。
それまでのEUでは、セミトレーラ(全長13.6メートル、連結全長16.5メートル)とフルトレーラ(全長7.82メートルのトレーラを2つ、連結全長18.75メートル)という連結車を認めていたが、EMSによりショートモジュール+ロングモジュールという組み合わせた可能になった。
例えば、セミトレーラ+センターアクスルトレーラ、スワップボディキャリア+セミトレーラといった組み合わせなどで、連結全長は25.25メートルとなる。これによりセミトレーラ2台とフルトレーラ1台分の貨物を、EMS2台で運行できるため(3台から2台)エネルギー効率が高い。
とはいえ、このような長大トレーラを認めるかどうかは、加盟各国に委ねられている。(ちなみに日本の「ダブル連結トラック」も欧州の事例を参考に導入されたもので、日本版EMSと言えるかもしれない)
今回の提案にはEMSの長大トレーラが国境を超える際のルールの明確化も含まれている。これにより両国間の協定や、国境を超える回数の制限などが不要となり、同じ量の荷物を少ない回数で運ぶことができる。
併せて提案されたのが貨物鉄道の利用だ。鉄道が運送会社にとって魅力的な選択肢となるとともに、貨物の取り扱いが増えることで鉄道ネットワークの利用率が向上し、サービスキャパシティが向上するため旅客運送においても利益があるという。
現在、欧州における鉄道の運行管理は、年単位で、国ごとに、手動で決定されている。このため国境を超える運行は他の輸送手段より不利だ。しかし長距離輸送に適した輸送手段であることは間違いなく、鉄道貨物のおよそ50%が国境を超える長距離輸送となっている。
このように国境によりネットワークが分断されているため、欧州の貨物鉄道は頻繁に遅延が発生し、単一市場というEUの理想が妨げられている。
提案されたのは単一の「欧州鉄道圏」により鉄道インフラを管理するというもので、貨物列車の柔軟な運行や荷主のサプライチェーンに合わせたジャスト・イン・タイム輸送を実現するとした。これによりトラック輸送への依存を減らし、全体としてのエネルギー効率を高めることを目指している。
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