電気自動車(EV)自体の歴史は長いが、高いエネルギー密度と出力密度を備えた二次電池とパワーエレクトロニクス、高効率モーターを用いた高性能EVが登場したのはここ10年の話。
新型eキャンターは前身のキャンターE-CELLから数えて12年におよぶ研究開発と実証試験、営業運行の積み重ねから生まれたが、これは高性能EVとしても屈指の実績である。今回はそんなeキャンターの12年の歴史を振り返ってみたい。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/三菱ふそうトラック・バス、「フルロード」編集部
キャンターE-CELL発表(2010年)
2010年9月のIAA国際商用車ショーで発表されたTEキャンター標準キャブ欧州仕様ベースのショーモデル。
高電圧バッテリーは総電圧278Vのリチウムイオン電池で、出力70kW(約95PS)、トルク300Nm(約30.5kgm)のモーターを搭載。航続距離120km、充電時間6時間とした。
架装性を確保するため電池モジュールをエンジンルーム内とシャシー下に配置。翌年の東京モーターショーではバン型車として参考出品された。
キャンターE-CELL第2世代(2013年)
E-CELLの第2世代は、TFキャンターベースのEVへ進化。
電動パワートレインは総電圧360V、容量12kWhのリチウムイオン電池(メルセデス・ベンツPHEV乗用車と同じ)×4基または6基をシャシー左右に配置し、モーターは最高出力96kW(約130PS)、最大トルク650Nm(約66.2kgm)へ変更。
初の実証試験は13年6月から中日本高速道路での道路維持作業車としてスタートし、非接触給電システムの実験も行なわれた。
14年7月からポルトガル(平ボディ、バン型車)、16年4月からドイツ(バン型車、三転ダンプ)でも試験を実施した。
eキャンター発表(2017年)
国内初の量産型EVトラックとして16年9月のIAAでコンセプトカーを、17年9月にアメリカのニューヨーク市で生産車を発表した。
TFキャンターベースで車型はGVW7.5トンワイドキャブ、ロングボディのみ。
総電圧360V、容量13.8kWhのダイムラー製リチウムイオン電池×6基をシャシー左右に搭載し、最高出力129kW(約175PS)、最大トルク420Nm(約42.5kgm)の減速機付きモーターを搭載し、航続距離100kmを確保した。