従来車との組み合わせで燃料を大幅に削減する電動セミトレーラ
セミトレーラとは一般的に駆動軸を持たない被けん引車のことで、トラクタ(ヘッド)によってけん引される車両を指す。トレーラ・ダイナミクス(アーヘン近郊のエシュバイラーが本拠)の「eトレーラ」は、ここにバッテリーと電動の車軸を追加したもの。
またキングピン(トラクタとトレーラの連結器)にセンサーを追加したことで、軸重配分の最適化が可能となり燃費効率の更なる向上を目指した。
トレーラ側の電動アクスルは、トラックの動き初めや上り坂などエンジン燃費が悪化する高負荷時に追加のパワーを提供することでエネルギー消費を抑える。また、下り坂ではトレーラ側のバッテリーがエネルギー回生に役立ちそうだ。なお、バッテリーが空になった場合も安全のために電力の供給は保たれるという。
中~短距離の試験はディンゴルフィンク工場周辺で物流サービスプロバイダーと協力して4日連続で行なわれた。運行ルートは地形的な変化に富んだ行き帰りの輸送で、高速道路と一般道を走る。一日の走行距離は最大250kmだった。
eトレーラとトラクタのデータはリアルタイムに収集され、それによると燃料消費量を従来比で46.59%削減した。
いっぽう長距離輸送の試験は、BMW乗用車(電気自動車)のエネルギー関係の部品を約16トン積んで実際に運行するというもので、走行距離は約450kmとなる。こちらは主に高速道路を走行し、短距離輸送を上回る48%以上の燃料削減を確認した。
これらの結果は、最大580kW(約777馬力)のモーターと400/600kWhのバッテリーという高性能のコンポーネントを採用した影響も大きいが、トレーラ側のバッテリーは100%グリーンエネルギーで充電しており、このトレーラ1台で年間120トンのCO2削減(ウェル・トゥ・ホイール)が可能という計算になる。
CO2を100%削減するBEVトラックとの組み合わせも
eトレーラと電動のトラクタを組み合わせ、再生可能エネルギーによるグリーン電力を使用するなら、当然ながら車両はCO2を排出しない。このシナリオは中距離試験の最終日にテストされた(電動トラクタはボルボ製)。通常通りの荷物を積載し、途中充電無しで600km以上の航続距離を実現した。
トレーラに電動の車軸を追加すると、バッテリーや制御ユニットの重量と合わせて当然ながら車両の重量は増加する。その分、積載量が減少するが、EUにおいてはハイブリッド車やゼロエミッション車に対する総重量規制の緩和(エクストラ・ウェイト)が認められており、重量増を相殺している。
(ディーゼルトラクタ+電動トレーラの組み合わせは全体としてはハイブリッド車という扱いになる)
また、eトレーラの価格は通常のトレーラより相応に高くなるはずだが、これも運行コストの低減により相殺される(特に昨今のように燃料価格が高騰している状況では)。
とりわけ、走行距離が長く燃料消費量の多い長距離輸送ではeトレーラによるコスト低減効果が大きく、ディーゼル車による既存のフリートを維持したままコスト低減と脱炭素を同時に推進できるのが大きなメリットだ。
BMWはeトレーラなどの取り組みを通じてグリーン輸送戦略を推進している。このようなセクターを横断する戦略は「BMW iFACTORY」(同グループにおける未来の自動車生産にむけた革新)においても重要な要素だ。
「私たちにとって、物流における技術革新を支援することは重要です。イノベーションによって弊社の輸送パートナーが炭素排出量を減らし、(サプライチェーン全体での)CO2フットプリントを削減することに役立つからです」。(ニコライデス氏)
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