さまざまな国の特装車を紹介する「世界の特装車」。今回はヨーロッパの「一台積み車両運搬車(車載車)」事情に迫ります!!
文/緒方五郎(商用車ライター)、写真/メーカー各社
欧州の車載車事情
欧州の車載車は、事故車への対応を前提として、高い耐久性と車載/牽引の両機能を備えるタイプが多い。ただ、GVW7.2〜8.8トン以上の中大型トラックが一般的な米国と比べ、扱うクルマのサイズがより多様なので、車載車も多彩である。
主流はスライド式の荷台で、傾斜角は10〜12度ほど。なかには5〜8度という低乗込角タイプもある。
また、日本では道路運送法の関係から成立できないが、欧州のロードサービス業界で普及しているのが、路上故障などで積み込んだクルマの乗員も同情できるよう、ベースシャシーにダブルキャブを用いた車載車だ。
全長が長大化するデメリットはあるものの、一度に車両搬送と人員移送ができる点は合理的である。
欧州には1台3役の車両運搬車がある!?
車両の積み降ろしを行なうウインチは、車載車に不可欠な装備だ。そのウインチを横転/転落したクルマの引き揚げなどの重作業に使うための「ウインチブーム」を備えた、凝った構造のスライド車載車が、欧州には存在する。
それがイタリアのオーマーズ社の「ピアナーレ4.2000/22B」だ。クレーンでもある程度の作業は可能だが、ウインチブームはより強力な作業能力が得られ、レッカー車特有の装備として知られる。
オーマーズ社では、それを車載車の荷台に格納して成立させた。そのぶん重く、積載量が減り、高価になるが、さまざまな現場に対応できる車載車だと言える。
欧州の「普通免許」対応の車両運搬車
欧州には、日本の普通免許に相当する「B免許」で運転できるGVW3.5トン以下の車載車も存在する。
積載量はベースシャシーや上モノによって異なるが、概ね1.0〜1.3トン程度を確保しており、保有台数の多いサブコンパクト車(トヨタ・アイゴやフィアット500など)を搬送できる。
積載対象をこれらに限れば、B免許取得者の雇用も可能になるというわけだ。もっとも、近年のサブコンパクト車も重くなっており、運べないモデルが増えてきた。