800~1000kmの航続距離も視野に!? MANが満を持して投入したBEVトラックの実力は?

多様な用途とバッテリー

800~1000kmの航続距離も視野に!? MANが満を持して投入したBEVトラックの実力は?
TGXより小さい「TGS」を電動化した「eTGS」も合わせて発売した。eTGXと共通のモジュールを使用するモジュラーコンセプトの賜物だ

 eトラックの特徴の一つが内製するバッテリー構成の柔軟性だ。バッテリーパック6基の場合、2基はキャブ下に搭載し、4基はフレームのサイドに追加する形となる。その両方が最大480kWhの容量を持ち、一日の走行距離は最大で800kmに及ぶ。長距離輸送も充分に可能な航続距離だ。

 大型商用車用に開発したバッテリーは温度管理機能のついたNMCセルを採用し、小型ながら高いエネルギー密度を実現する。また、長寿命と残量の少ない場合や外気温が低い場合の優れた充放電特性も備えている。

 スーパーマーケットの配送から、建築資材の地場輸送、生産物流における長距離輸送まで、多様な用途に対応するために重要なのは、航続距離、積載量、充電時間などの面で適切な車両構成を選択することだ。たとえば都市部の集配送であれば、一般的な航続距離は1日に250kmを超えることがなく、稼働を終えたあとは翌日まで駐車場で充電できるからだ。

 モジュラーバッテリーというコンセプトはeTGXとeTGSで共通し、最大構成の6バッテリーパックに代わり、3、4、5パックという構成が可能となっている。搭載するバッテリーを減らすことで車両は最大2.4トン軽くなるため、その分の積載量を確保したり、空車時の電費を改善したりできる。

 充電はCCS方式(主にEV乗用車用の規格)の375kWに加えて、よりパワフルなMCS方式(大型車用の充電規格)にも発売当初から対応する。MCSは最初は750kWだが、後にメガワットクラスの大電力にも対応する予定となっている。

 2つのCCSの接続部はフロントのホイールアーチ後部の車両左右と、車両リアの右側フレーム横を自由に組み合わせることができる。フロントCCSの左右どちらかはMCSに変更することが可能だ。

 バッテリー管理システムは、個々のセルの充電率や電圧・電流の監視と、充電中および走行中の温度管理を行ない、バッテリーが常に最適な状態にあることを保証するもの。

駆動ユニットの配置

800~1000kmの航続距離も視野に!? MANが満を持して投入したBEVトラックの実力は?
バッテリーパックはキャブ下の2基+フレーム側に最大4基。バッテリーは重いので最小構成(合計3基)は最大構成(同6基)より2.4トン軽くなり、その分を積載量にまわせる

 モジュラーバッテリーはeTGXとeTGSの優れた架装性にも貢献しており、フレーム左右のフリースペースにポンプや機器の収納エリア、クレーンのアウトリガなど様々なボディ用コンポーネントを搭載できる。これはバッテリー配置の柔軟性と共に架装スペースが増加したおかげだ。

 キャブ下に搭載するバッテリーは、ディーゼル車におけるエンジンと同様、適切な重量配分のためでもある。

 駆動方式はフレームの中央に電動モーターを含む駆動ユニットを配置したセントラルドライブ方式だ。同期式電動モーター、インバーター、2ないし4段のトランスミッション(出力による)と制御系を一体化した駆動ユニットが、カルダンシャフト(ドライブシャフト)を介して後輪を駆動する。

 従来車で実績のある駆動軸を採用できるのも、セントラルドライブ方式の利点だ。

 モーターの馬力(出力)帯は333hp(254kW)/449hp(330kW)/544hp(400kW)を用意し、最大トルクはそれぞれ800/1150/1250Nmだ。モーターは回生ブレーキとして発電にも利用され、回生する最大電力量はモーター出力にも依存するが、制動力は最新の高性能ディーゼルエンジンの排気ブレーキに匹敵する。

 なお、回生時のトラスミッションのシフトも自動化されており、回転数に合わせた最適な回生をサポートする。

 セントラルドライブを採用する別の利点は、車軸にモーターを組み込んだeアクスル方式より、駆動軸の荷重を大きくとれることだ。また、駆動ユニットがバネ(サスペンション)より上にあるため、いわゆる「バネ下」の重量低減による操縦安定性と、フレームにマウントされる駆動系を振動や衝撃から守ることにもつながっている。

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