BEV大型トラックもイヴェコブランドに
イヴェコは米国のニコラと提携しており、電動パワートレーンの大型トラック(BEVと燃料電池)については「ニコラ」ブランドであったが、ニコラの欧州市場撤退に伴い独自ブランドの展開を目指すとしていた。発表通り、この度、イヴェコブランドのBEV大型トラック「S-eウェイ」が公開された。
S-eウェイはイヴェコとして初めて「ソフトウェア定義型自動車」(機能追加を新型車ではなく、ソフトウェアのアップデートで行なって行くビジネスモデル)として開発した。フル積載の通常の走行条件で500kmの航続距離を持ち、350kWでの急速充電に対応し、80%充電は90分で完了する。
S-ウェイシリーズに限らず、コネクティビティは全てのモデルで標準化された。これを通じて人口智能(AI)アルゴリズムによるルート最適化、ドライバーの運転評価などの機能を含む包括的なテレマティクスサービスを提供し、商用車の生産性と利益率を最大化する。
現在、イヴェコのコネクテッド車は約10万台だが、2030年には50万台まで増やすという目標を掲げた。
いっぽう、安全性は引き続きイヴェコの優先課題で、様々な先進ドライバー支援システム(ADAS)が組み込まれている。たとえばブラインドスポット警報やドライバーの注意力検知などで、欧州で2024年に強化される新安全規則の法定要件を超える安全機能を用意し、交通弱者の保護に取り組んでいる。
同時に車両を補完する金融ソリューションを強化した。特に「GATE」(グリーン&アドバンスト・トランスポート・エコシステム)と称する枠組みは、グリーンな商用車レンタル(リース)のプラットフォームで、「ペイ・パー・ユース」(従量課金)により顧客は安心して電動モビリティの利用を開始できる。
GATEではBEVだけでなくバイオメタン(気体/液体)を利用する車両も提供される見込みで、運送会社はすぐにでもカーボンニュートラルなモビリティにアクセス可能となるそうだ。
ロゴ刷新と自動運転トラック
新生イヴェコの幕開けと共に、イヴェコのロゴも刷新された。新ロゴのコンセプトは「変革の鼓動」(パルス・オブ・チェンジ)で、変革はイヴェコの新しいブランド・アイデンティティとなる。
聳え立つ黒の文字は、イヴェコのダイナミズムと革新性を反映するとともに、その歴史を誇っている。いっぽう、新ロゴの中央に配置した青の「フラッシュ・オブ・ライト」により、伝統から新エネルギーによる未来への転換を表現している。
ローンチイベントの最後に、伝説的なロックバンド「メタリカ」とのコラボが発表された。イヴェコはメタリカの欧州ツアーを電動および天然ガスのトラック・バスで支援する。併せてMY24の商品レンジ全体のテーマソングが、メタリカの「イッツ・エレクトリック」になった。
いっぽう、ローンチイベントとは別になるが、同日付けで米国の自動運転システム開発企業・プラス、欧州のドラッグストアチェーン大手・dmドロゲリー・マルクト、運送会社のDSVなどと、2024年前半から自動運転トラックをドイツで先行試験することを発表した。
イヴェコの大型トラックにプラスのAIベースの高度自動運転システムを組み込み、dmの貨物を運ぶトラックをDSVが運行する。運行ルートはバーデン・ビュルテンベルクとヘッセン地方を結ぶルートで、実際の商用輸送において先行試験を行なうことで他の路線などへの拡大と、自動運転トラックの商業化に先鞭をつける考えだ。
(ドイツでは先だって一部路線での自動運転を可能にする法改正が行なわれている)
このプログラムは、最新の自動運転技術が貨物輸送の高度化のために既に利用可能であることを示すとともに、トラックをより安全にし、ドライバーのストレスを減らし、貨物輸送をより効率的でより持続可能にすることを目指している。
なお、プラスの仮想ドライバー「プラスドライブ」はこれまでの導入事例から、運送会社のTCO(総保有コスト)を減らし、ドライバーの仕事の満足度を向上させることが示されている。