参考とした海外での検討事例
その自動物流道路の海外での検討事例として挙げられたのが、スイスのCST(Cargo Sous Terrain)とイギリスのマグウェイ(MAGWAY)だ。
貨物輸送量が2040年までに4割増加すると予測されるスイスでは、主要都市を結ぶ物流専用地下トンネルを建設し、自動輸送カートを走行させる物流システムの構築が計画されている。
CST社の地下物流システムは、トンネル内の3レーンを自動輸送カートが30km/hで24時間体制で走行するというもの。左右2レーンは走行レーン、真ん中の1レーンはメンテナンスや仕分けのための空間となる。カートには欧州標準の「ユーロパレット」を2つ積載可能で、地下トンネルと地上のハブ(物流ターミナル)は垂直に接続する。
ハブからの地上走行は、トラックの他、自動配送ロボットによるラストマイル輸送も想定している。
計画では2026年に着工し、2031年から第一段階の運用が始まる予定で、2021年にスイス連邦議会で「地下貨物法」が成立し、既に施行されている。建設費用は約5.7兆円とされ、インフラの建設・システムの運営は民間資金により実施するという。
いっぽう、イギリスのマグウェイ社が開発している「マグウェイ」システムは、物流用に開発した低コストのリニアモーターを使用した貨物専用線だ。電磁気力を動力とする完全自動運転の物流システムとなる。
西ロンドン地区において、既存の鉄道敷地内に全長16kmのマグウェイ専用線の敷設を想定し、現在はテスト施設で開発・走行試験を行なっている。
鉄道敷地内はレールの横に、駅構内はホーム下に専用線を敷設し、各物流施設までは地下等を通る専用線を引き込む。物流施設では荷物を自動で積み下ろしするため、荷捌きスペースやトラックヤードを削減することが可能だといい、当局や鉄道会社との調整、必要な許認可等の確認は今後実施するそうだ。
日本の自動物流道路はどうなる?
こうした海外事例を参考に日本版「自動物流道路」の検討が始まったわけだが、検討会は2024年夏ごろの中間とりまとめ後、10年で新しい物流形態を実現すると意気込んでいる。技術的ブレイクスルー、デジタル化、法整備とインフラ整備、官民連携の拡大や商慣習の見直しなどが進むという前提の議論である。
検討のポイントとして、貨物の小口多頻度化による物流の増大とドライバーの高齢化・担い手不足に対応するためトラック輸送をサポートする形にすることや、クリーンエネルギーによる持続可能な物流を実現すること、既存システムとの調和を図ることなどが挙げられている。
働き方改革による「物流の2024年問題」があり、早期実現が求められるとはいえ、パレットの標準化(サイズの統一)も未だに達成できていない我が国にとって(戦後間もない頃から標準化の必要性が指摘されていた)、「10年で新しい物流を実現」は非常に厳しいスケジュールだ。
とはいえ、「2024年問題」は2024年に始まるのであって、終わるのではない。物流と社会をどのように変革するのか、方向性を示すことには意義がある。今後、検討を重ねて公表されるであろう具体案が、トラックドライバーにとって希望の持てるものであることを期待したい。
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