このところ昨年2023年のさまざまな統計データが発表されているが、中にはあまり芳しくないデータも見受けられる。
交通事故にまつわる統計もその一つだ。昨年は交通事故の発生件数、死傷者数とも増加に転じており、トラックが第一当事者となる死亡事故も増加している。日本の交通事故発生状況は明らかに潮目が変わってきているのだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真・図/フルロード編集部・警察庁
交通事故は発生件数・死亡事故とも増加
警察庁が発表したデータによると、2023年の交通事故発生状況は、前年より7000件余り多い30万7911件。負傷者数は8400人余り多い36万5027人で、そのうち重傷者数は1600人余り多い2万7636人となっている。さらに死者数は68人多い2678人である。
ちなみに交通事故発生件数が最も多かったのは2004年の95万2720件、負傷者数も2024年の118万3617人で、死者数が最も多かったのは1970年の1万6765人だった。
その頃に比べれば今ではすべての項目が大幅に減少しているが、しかし、ほぼ順調に減少傾向が続いていた交通事故の発生件数や死傷者数がここに来て下げ止まり、増加に転じたことにはやはり注意が必要だろう。
トラックの交通事故はどうか? 警察庁「交通事故統計」(令和5年12月末)によると、事業用貨物自動車(軽貨物を除く)の第1当事者別死亡事故は対前年比プラス30人の199人で、6年ぶりに増加に転じた。
ちなみに「第1当事者」とは、最初に交通事故に関与した車両等の運転者または歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者をいい、また過失が同程度の場合には人身損傷程度が軽い者をいう。
前述の199人の内訳は、大型貨物が119人、中型貨物51人、準中型貨物が23人、普通貨物が6人となっている。このほかトレーラでは18人が死亡している。
また、自家用貨物自動車の場合は、大型貨物27人、中型貨物35人、準中型貨物60人、普通貨物87人の計209人が死亡しており、さらにトレーラでは5人が死亡している。
つまり、事業用と自家用、それにトレーラも含めると、昨年はトラックが第1当事者となる交通事故で431人が亡くなっていることがわかる。これは前年より9.2%も増えている計算である。まさに急増だ。
労働災害のデータでも増加傾向が顕著に!
また、先ごろ厚生労働省がまとめた業種別労働災害発生状況(令和5年速報値)によると、陸上貨物運送事業における道路上の交通事故は823件発生しており、そのうち死亡事故は46人となっている。これは前年より事故件数で58件、死者数で15人増えている計算だ。
あくまで労働災害としてカウントされた交通事故なので、警察庁のデータより数は大幅に少ないものの、事故件数・死者数とも急増していることがわかる。
これに関して陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)がまとめた死亡事故の発生状況の概要を見てみよう(「陸運と安全衛生3月号」より)。
昨年10月に発生した事故では、工場より商品を配送するため、高速道路に入り500mほど地点において、事故処理中に左側路肩に停車していた大型トラックに追突。自車両は大破し、高速機動隊によって車両より救出され病院に搬送されるも、死亡した。死亡した運転手は55歳で、トラックの経験期間は6カ月だった。
以下はすべて昨年12月に発生した交通事故である。まず、食品の配達業務のため高速道路を4tトラックで走行していた被災者が、工事のため減速した大型トラックに追突。頭や胸を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。経験期間7年の60歳の運転手だった。
また、大型トレーラの単独事故の例では、一般道のトンネル内(片側2車線のみ、反対車線なし)を走行中、左内壁の歩道の手摺りに車両の左角がぶつかり、その反動で今度は車両の右角が右内壁に激突。衝撃で運転席からフロントガラスを突き破って道路に転落し、止まりかけていた自車の前輪に踏まれ、翌日に死亡した(失血死)。経験期間20年の57歳の運転手だった。
さらに2tトラックを運転中、配送先から戻る途中の高速道路が渋滞し、停車していたところ、後ろから来たトラックに追突されたケースもある。玉突き事故となり、前に停まっていた大型トラックに衝突し、運転手が死亡、助手席の同僚が重症を負った。死亡したのは経験期間12年の57歳の運転手だった。
交通死傷事故はいつも悲惨である。今年も4月6日~同月15日まで「春の全国交通安全運動」が実施されるが、交通事故の件数が増加に転じた今、死亡事故ゼロを目指し、ここが踏ん張りどころかもしれない。
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