航続距離1000kmなど従来車と同等のパフォーマンス
積載量、航続距離、馬力とトルクなど、ダイムラーのエンジニアはGenH2トラックのパフォーマンスを、従来の長距離輸送用トラックであるメルセデス・ベンツ「アクトロス」と同等になるように設定した。
したがって、連結総重量(GCW)40トンに対して積載量は約25トンを確保した。液体水素を蓄える極低温タンクを2基備え、セルセントリック製の燃料電池システムが駆動力を供給する。セルセントリックはダイムラーとボルボの合弁会社で、商用車用の燃料電池を開発している。
燃料電池システムの出力は300kW(2×150kW、約408ps)で、搭載バッテリーは一時的に400kW(約544ps)を供給する。
バッテリーの総容量は70kWhと比較的小さいが、エネルギー供給のためではなく、状況に応じて燃料電池をサポートするのが仕事だ。例えばフル積載での加速時や登坂時にはバッテリーが燃料電池を補う。総容量が小さいため、積載量への影響は少ない。
また、燃料電池の出力が(走行に対して)過剰となった場合や、ブレーキ回生による電力を蓄えるためにもバッテリーが活用される。
燃料電池システムとバッテリーは洗練された動作ストラテジーを持っているといい、耐久性を最大化するべく、すべてのコンポーネントが最適な温度を保てるように冷却・加熱システムを備えている。
プロトタイプが搭載する2基の電動モーターは、連続で2×230kW(合計で約625ps)/ピークで2×330kW(同900ps)を発揮する。トルクは同じく2×1577Nm/2×2071Nmだ。
液体水素タンクはステンレス製で、内部は真空断熱された2重のチューブとなっている。合計88kg(1基あたり44kg)の水素により、GCW40トンのフル積載で1000km以上の航続距離を誇る。
ダイムラーが気体より液体の水素を選好するのは、エネルギー密度の高さからだ。密度が高いということは、同じ容量でより長い航続距離を実現でき、これにより従来のディーゼルトラックと同じような運行が可能になる。また、液体のほうが輸送しやすく、供給網が充分に整備されれば、コスト面では気体より有利になると予想されている。
(ただし、極低温を維持しないとボイルオフして燃料が減ってしまうため、稼働率の高い商用車でないと扱いにくい)
高圧容器より断熱容器のほうが軽く積載量も確保できるため、長距離輸送などに適している。ダイムラー・トラックが2023年9月に行なったGenH2の公道走行では、1047kmを走ってもタンク内の液体水素にはまだ余裕があった。
カスタマートライアルは、7月25日以降、各社が順次開始する。
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