新型パジェロが搭載する2.4Lクリーンディーゼルは、最大トルク480Nmという力持ちだ。ところが兄弟分のトライトンが2基のターボを使う「2ステージターボ」なのに対し、パジェロはなんとシングルターボ。しかもトルクはトライトンを上回る。なぜパジェロはターボをひとつにしたのか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、三菱
【画像ギャラリー】さすがパジェロ!! 論より証拠、超急坂もぐいぐい登っていく姿をご覧アレ!(7枚)画像ギャラリー2基のトライトンに対してパジェロは1基!
まず整理しておきたいのが、トライトンと新型パジェロのディーゼルエンジンの違いだ。
日本仕様トライトンが積む2.4L直列4気筒クリーンディーゼルは、最高出力204ps、最大トルク470Nm。過給器には「2ステージターボ」を採用している。
これは回転数やエンジン負荷に応じて2つのタービンを協調させるシステム。三菱によれば約1500rpmという低回転から最大470Nmを発生し、低中速から力強くレスポンスのいい加速を狙ったものだ。
対する新型パジェロは、同じ2.4Lクラスのクリーンディーゼルながら、「ワイドレンジ・シングルVGT(可変容量ターボ)」を採用する。ターボはひとつなのに最大トルクは480Nm。トライトンより10Nm大きい。さらに新開発8速ATと組み合わせ、発進から高速域まで力強くレスポンスのいい加速を実現すると三菱は説明している。
ではVGTとは何なのか?
ポイントはタービンへ排気ガスを送り込む部分にある可変式のベーンだ。低回転ではベーンを絞り、少ない排気ガスでもタービンを勢いよく回す。逆に回転数が上がればベーンを開き、大量の排気ガスを流せるようにする。
イメージとしては、低回転では小さなターボのように素早く反応し、高回転では大きなターボのように排気を受け止める仕組み。ターボを交換することなく、ひとつの過給器で幅広い回転域をカバーできるわけだ。VGTは低回転トルクや過渡応答、高回転域での効率を両立しやすいという特徴を持つ。
480Nmより大事なのは「扱いやすさ」だった!?
そう考えると、新型パジェロがシングルVGTを選んだ狙いも見えてくる。
トライトンは世界各地で荷物を積み、時にはトレーラーを引き、仕事にも使われる1トンピックアップだ。低回転から中高速域まで大量のトルクを安定して引き出すことが重要で、2つのタービンを使い分ける2ステージ方式はその性格に合っている。
いっぽう新型パジェロが目指したのは、悪路でとにかく強ければいいクロカンではない。三菱は従来からの「Confidence(信頼)」と「Comfort(快適)」に、新たに「Prestige(上質さ)」を加えたフラッグシップSUVとしている。
そこで重要になるのが、絶対的な最大トルクだけでなく、アクセルを踏んだ量に対して狙っただけの駆動力が自然に出てくることだ。
岩場をゆっくり進む時に、ターボが突然効いて480Nmがドン! と出てきては扱いづらい。街中でも高速道路でも、踏み始めから滑らかにトルクが立ち上がってほしい。
ワイドレンジVGTなら、ベーンの動きを細かく制御することでひとつのターボを幅広い領域で働かせられる。そこへ8速ATを組み合わせれば、エンジン回転を適切な領域に保ちながら480Nmを引き出しやすくなる。
さらに一般論として、ターボを2基使う方式に対して1基で成立させられれば、吸排気経路や過給システムをシンプルにまとめやすいこともメリットとなる。
つまり新型パジェロは、「ターボを何基積んだか」という派手さではなく、1基を自在に使う方向を選んだのである。
最大トルクは470Nmから480Nmへ増えた。しかし、本当に注目すべきはその「10Nm」ではないのかもしれない。
低速の岩場から高速道路まで、同じ480Nmを必要な時に必要なだけ引き出す。シングルVGTと8速ATの組み合わせこそ、武骨なクロカンから上質なフラッグシップSUVへ進化した新型パジェロを象徴するメカなのである。
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