先進のeアクスルを自社開発
先進技術の一つ、eアクスル(電気アクスル)とは、走行用モーターをリア駆動軸自体に組み付けたものだ。三菱ふそうは、トラックでは類例のないド・ディオン式リジッドアクスル懸架にモーターを組み合わせることで、ディーゼル車と同等のアクスル容量・耐荷重を得ながら、バネ下重量増の抑制を両立する、コンパクトなeアクスルを開発した。
実は現在、日米欧で販売されているEVトラックは、小型・中型・大型を問わずセンタードライブ式が多く、eアクスル式は、まだダイムラートラックを含む一部の商用車メーカーとサプライヤが手掛ける程度である。センタードライブ式は、ディーゼルトラック用ドライブトレインが流用できるので比較的電動化が容易だが、eアクスル式には、シャシー下を前後に走るプロペラシャフトが不要になるという、トラックシャシーにおいて画期的な特徴がある。
新型eキャンターのモーター自体は1種類ではあるものの、連続出力115PS・最高出力150PS仕様と、連続出力150PS・最高出力175PS仕様の2種を設定、最大トルクは2種とも430Nmで、ディーゼルキャンターと同レベルとしている。
もちろん補助ブレーキとして、減速エネルギーを活用した回生ブレーキ機能を搭載、4段階の補助ブレーキ強度設定のうち、もっとも強い「3」レベルでは、完全停止時以外はほぼワンペダルオペレーションでの運行が可能といわれている。
航続距離の国交省審査値が明らかに!
もう一つの先進技術、モジュール式高電圧バッテリーには、ダイムラーグループ向け専用に開発された中国・CATL製リン酸鉄リチウム(LFP)電池を採用。制御ユニット、水冷式バッテリー冷却系とともにバッテリーパックを構成し、ホイールベースに応じてパックを1~3基搭載する。
その搭載スタイルも、初代モデルのシャシーフレームの左右サイドではなく、シャシーフレームに吊り下げる形で搭載する。これによって、初代ではワイドキャブ(キャブ幅1995mm)のみ成立可能だったEVが、新型では標準幅キャブ(キャブ幅1695mm。ただしeキャンターは4ナンバー車の設定はない)でも展開できるようになった。
バッテリーパック(容量41kWh)は、搭載数によって「Sサイズ(1基)」「Mサイズ(2基)」「Lサイズ(3基)」という通称が与えられている。Sサイズバッテリーはホイールベース2500~3400mm車まで、Mサイズバッテリーは同3400~3850mm車までそれぞれ設定し、3400mm車ではSまたはMサイズを選択できる。Lサイズバッテリーは同4750mmのみである。
そして今回の正式発売に伴って、ついに国交省審査値の航続距離が明らかになった。実際には車型によっても航続距離は異なってくるが、Sサイズバッテリーの標準幅キャブ車は最大116km、Mサイズバッテリーの標準幅キャブ車は最大236kmで、Lサイズバッテリー(ワイドキャブおよびEX拡幅キャブ)は最大324kmである(審査値全体では99~324km)。
ちなみにEV乗用車では現在、WLTCモードで航続距離を測定するが、車両総重量3.5トン以上の「重量車」は測定モードが未定のため、国交省審査値では一充電あたり60km/h定地走行での値が用いられている。
なお、高電圧バッテリーには、寒冷期にタイマー予約で「暖機」し、稼働を始める時刻にあわせて高いパフォーマンスを発揮できるようにする「バッテリープレコンディショニング」機能も標準搭載している。