CVTのトップメーカーとして知られているJATCO(ジヤトコ)が電動アシスト自転車用の駆動ユニットを開発したというので取材に行ってきた。自動車用大手トランスミッションメーカーのジヤトコが「なぜ自転車?」と不思議にも思えるが、これは電動化時代への移行を目指す取り組みのひとつなのだという。その高い技術力の秘密に迫る。
文/鈴木直也、写真/ベストカー編集部
電動化時代にトランスミッションメーカーが生き残りをかけて挑む!!
トランスミッションは内燃機関にとって不可欠の重要パーツだが、一方純電気自動車(BEV)には不要とされている。そんな中、トランスミッションメーカーはどこも次世代の主力商品としてeアクスル(モーター、減速機、パワーコーントローラなどを一体化したユニット)を開発しているわけだが、その技術を応用して新たな市場を開拓しようというチャレンジだ。
そこでジヤトコがアピールするポイントが、3段内装変速機とモーターを一体化したオールインワン構造の電動アシスト自転車用駆動ユニットだ。
電動アシスト自転車用のモーター駆動ユニットは既存の自転車系パーツサプライヤーから数多く発売されているが、クランク部にモーターを配置するか、あるいは後輪ハブにモーターを組み込むかの二択。モーターと変速機を一体化した後輪ハブというジヤトコの提案するコンセプトは、これまでになかった新しい技術といえる。
ジヤトコの技術者に言わせると、それを可能にしたのは「ミッション屋としての長年の経験と技術」だという。
高性能トランスミッション開発で培った技術力が活かされる小型軽量化
たしかに、自転車の後輪ハブという狭いスペースに3段変速機、モーター、さらにモーターの減速ギアまでを高密度にパッケージングするのはけっして容易なことではない。カットモデルの写真からも、モーター本体の奥に2組の遊星ギアユニットがぎっしり詰まった精緻なメカニズムがうかがえる。
では、この一体構造化の何がメリットなのかというと、まずは後輪ハブエンド幅135mmのフレームなら最小限の改造で電動化が可能な汎用性である。
ジヤトコが狙っている市場は、おそらくママチャリ系電動アシスト自転車ではなく、スポーツバイクの電動化だ。ライト系のスポーツバイク愛好家にこのスマートなメカニズムを売り込もうという狙いがうかがえる。
変速レンジの広さでは外装変速機の方が有利だが、そこはヘビーユーザーの領域。むしろ、存在を感じさせないモーターユニットや、内装変速機のスッキリしたチェーンまわりなど、デザイン面での優位性を重視した印象がある。
今回の発表ではホダカ製のフレームにジヤトコ製ドライブユニットを搭載したプロトタイプが展示されていたが、一見して「どこにモーターがついているの?」と見まがうほどのスマートさ。まさにスタイリッシュな電動バイクというイメージがある。
プレスリリースによると、ホダカ側の評価は「ジヤトコのドライブユニットはモーターと変速機が一体となった2-in-1システムであり、コンパクトかつ自由度の高い設計が可能です。また、自動車のトランスミッションで磨かれた高い品質にも期待しています」とのこと。協力関係にあるパートナーのコメントではあるが、ジヤトコの電動ドライブユニットが自転車業界にとって注目の新技術ということがうかがえる。
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