オデッセイ、シビックも栄枯盛衰 ホンダの名門車が凋落した分岐点

シビックの分岐点(2000年発売/7代目)

2000年発売のシビック。日本カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いたが、後発のフィットと競合し、実際、続く8代目からハッチバックは廃止されている

 ホンダの基幹車種で、初代モデルは1972年に発売。全長3545mm、全幅1505mmのサイズは、今のパッソと比べてもさらに小さい。1970年代中盤の昭和50年排出ガス規制では、後処理装置を採用しない希薄燃焼方式でクリアして注目された。

 1983年発売の3代目は、小さなボディに広い室内を備え、特に3ドアハッチバックは若年層に高い人気を得た。この後も進化を重ね、1991年登場の5代目は、同年に1か月平均で1万4000台を登録した。

 1997年には初代シビックタイプRが追加され、優れた走行安定性と最高出力が185馬力に達する1.6L・VTECエンジンで、一躍人気を高めた。価格も199万8000円と求めやすかった。

初代シビックタイプR(1997年発売)

 この6代目までは良かったが、2000年に登場した7代目で人気を下げてしまう。日本国内では3ドアハッチバックが廃止され、5ドアとセダンのみになった。ホイールベースは2680mmと長く、車内も広がったが、スポーティ感覚は大幅に薄れた。

 しかも、2001年には前述の初代フィットが発売され、燃料タンクを前席の下に配置する現行型と同様の設計により、後席と荷室が広かった。

 価格は売れ筋の「A」が114万5000円だ。シビックの主力グレードとなる5ドア「1.5iE」は159万8000円だったから、フィットは優れた実用性を備えながらも45万円安く、販売面でシビックを打ち負かした。この7代目がシビック人気を下降させたターニングポイントだ。

 その後、2005年登場の8代目は3ナンバー専用セダンになり、2010年に国内販売を終えた。

 2017年にセダンを寄居工場で生産することもあってシビックは国内販売を再開したが、「なぜ再び国内で売るのか」というストーリーが語られていない。漠然と販売を再開した印象が強く、今では前述の通り1か月に900台前後しか売れていない。

 現行シビックがこのまま売れ行きを下げて国内販売を終了すると、もはや二度と復活は望めない。効果的なテコ入れを行ってほしい。

アコードの分岐点(1993年発売/5代目)

1993年発売のアコード。北米向けのUSアコードと共通モデルとなり、全車3ナンバー化された初のモデル

 シビックに続いて登場したホンダの主力車種だ。初代モデルは1976年に発売され、厳しい排出ガス規制を乗り切った。

 1985年発売の3代目は、前後席ともに居住性が優れ、内装は上質で、視界も良いから運転しやすい。1989年登場の4代目も3代目の路線を踏襲したが、後に3ナンバーサイズのワゴンを北米から輸入している。

 この後1989年に消費税が導入されると、自動車税制の改訂で3ナンバー車の不利が撤廃。1993年発売の5代目は、海外仕様と共通ですべて3ナンバー車になった。

 メーカーとしては、ボディが大きくなって見栄えも良くなればユーザーは喜び、海外と共通化すると開発効率も高まって一石二鳥と考えた。

 ところがこの方法が裏目に出て、アコードの国内販売は急降下した。3ナンバーサイズが敬遠されただけでなく、海外に合わせた大味なデザインが、国内で共感を得られなかった。問題はサイズではなく「誰に向けて開発したのか」というクルマ作りの本質にあるわけだ。

 しかもホンダは、5代目アコードの発売と同じ1993年に、5ナンバーサイズで内外装を上質に仕上げたアスコット&ラファーガを投入。アコードは少なからずユーザーを奪われた。

6代目アコード。セダンの基準車を再度5ナンバー化したほか、ユーロR(=写真)など本来のスポーティさを強調するモデルもラインナップ

 そこで1997年登場の6代目は、セダンを5ナンバーサイズに戻している(ワゴンは3ナンバー車を踏襲)。

 従来の引き締まったスポーティ感覚を取り戻したが、当時すでに1998年発の初代ステップワゴンやS-MXが注目されていた。遅きに失した感があり、アコードは再び海外と同じ3ナンバー車になった。

 そして、北米では2017年に新型アコードが登場したのに、日本では今でも2013年に発売した旧型を売り続けている。

(編注/新型アコードは2020年2月下旬に日本発売予定。すでにホンダ自身も発売を明言しており、北米で先行発売されていたモデルが約2年半遅れで投入される)

2月下旬発売予定の新型アコード

 新型はプラットフォームを刷新して走行安定性を高め、安全装備も充実させた。そうなると日本のユーザーには、海外よりも危険なアコードを売っていることになってしまう。

 昨今の国内市場が貧困になった一番の原因も、まさにこの点にある。日本のユーザーを大切に思う気持ちが欠けていることだ。

 その結果、ホンダに限らず、日本の数多くの名車がターニングポイントを迎え、売れ行きを下げてしまった。

【画像ギャラリー】ホンダの名門 衰退に向かった当時と今のモデル

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