タクシーは空港からの移動手段に使われることも多く、外国からのお客様が一番はじめに目にしたり、乗車するケースもよくあるクルマである。それだけにアメリカなら黄色のイエローキャブ、イギリスなら黒いロンドンタクシーはその国のアイコンのような存在であり、日本ではJPNタクシーがそれになりつつある。
乗客として乗る分には非常に快適で文句のないJPNタクシーに小さいながらも影響を与えそうなタクシーとして、ロンドンタクシーの最新モデルがLEVC(London Electric Vehicle Company)ジャパンを通して2020年2月1日から受注が始まり、6月からのデリバリーを開始する。
当記事では実際に乗れる機会は非常に少ないにせよ、街で見たら目立つだけに気になる最新ロンドンタクシーをロンドンタクシーの歴史なども交えながら紹介したい。
文/永田恵一
写真/LEVC、Adobe Stock
【画像ギャラリー】ついに日本に上陸した新たなタクシー「TX」の姿を詳しく紹介
■運転資格は東大よりも難関!? ロンドンタクシーの歴史
ロンドンタクシーはもともと馬車の役割がクルマに変わったのがひと目でわかるようなスタイルをしたクルマだった。
ロンドンタクシーはオースチン「FX3」(1948年)から始まり、ロンドンタクシーらしいユーモラスなスタイルを持つようになった「FX4」(1958~1997年、1984年からはLTI社=ロンドンタクシーインターナショナルが生産)、「TX1」(1997~2002年)、「TX2」(2002~2006年)、「TX4」(2007~2017年)という歴史を重ねている。
またLTI社の経営権は、2010年から現在ボルボやロータスの親会社でもある中国のジーリー社に移っており、組み立てだけがイギリスで行われていた時期もあった。
スタイルはあまり変わらないながらも進化を続けたロンドンタクシーだが、歴代乗降性のいい観音ドアや高い全高を生かしたボーラーハットを被ったままでも乗れる広い室内、大柄のボディながらもタイヤの切れ角の大きいFRという点も生かした取り回し(最小回転半径は4m弱!)、FX4以降はスロープを内蔵しており車椅子での車内へのアクセスの良さや車椅子のまま乗車できる社会性の高さといった良きDNAは最新モデルでも不変である。
ロンドンタクシーは、ロンドンオリンピックがあった2012年から次期モデルの導入に向けた検討が始まり、当時LTIからロンドンタクシー社に社名を変えた現在のLEVC(ロンドンEV社)と日産が名乗りを挙げた。
日産は、日本でも販売されアメリカのイエローキャブの1台でもある「NV200」をロンドンタクシー的なスタイルとし、最小回転半径を4m弱としたモデルをプレゼンテーションした。
しかし、ロンドンタクシーとして採用するにあたり30マイル(48km)EV走行できなくてはならない(要するにプラグインハイブリッド)という条件が加わり、日産は条件をクリアできず撤退。プラグインハイブリッドという条件をクリアしたLEVCの「TX」がロンドンタクシーとして採用され、2017年12月の認可を経て2018年1月からロンドンの街を走っている。
なおノリッジ試験と呼ばれる、ロンドンタクシーの運転資格は運転技術に加え、ロンドンの施設や道路といった地理をすべて覚え目的地までの最短距離を即座に答えなければならないという、日本で言えば東大の入試に合格するより難しいと言われるくらいの難関だ。
それだけに、20年ほど前に筆者がロンドンに行った際には「ロンドンのタクシーは資格が厳しいからまったく心配ない」と言われた記憶があり、今になるとその意味がよくわかる。
コメント
コメントの使い方