ミニバンはセダンやコンパクトカーに比べて重心が高いからハンドリングが楽しくないとか、ボディが重いから遅い、というイメージを抱いている人も多い。
本当はスポーティカーが買いたい、走りのいいクルマ、楽しいクルマに乗りたいと思いながらも、諸々の事情によりミニバンを購入しなければいけないということになっても落胆することはない。
なぜなら現代のミニバンはひと昔と違って、総じて走りのポテンシャルが高いからだ。
本企画では、ハンドリングがいい(楽しい!!)、加速性能に優れる(速い!!)、走りの質感が高いという3つのテーマでナンバーワンを松田秀士氏が選ぶ。
文:松田秀士/写真:HONDA、TOYOTA、MITSUBISHI、中里慎一郎、ベストカー編集部
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ハンドリングがいいミニバン(楽しい!!)
楽しさという点では、ホンダステップワゴンモデューロXを選びたい。
モデューロXは2013年から発売されたホンダアクセスのコンプリートカーで、ステップワゴンベースのモデューロXは2016年にデビューしている。
ベースとなるステップワゴンそのもののハンドリングはもともと高いレベルにある。ベースモデルのステップワゴンのどこを評価するのかというと、サスペンションの動きがいいこと。
ホイールトラベルの伸び縮みがとてもスムーズで、直進時からコーナリング時のどのような状況下においても路面へのタイヤ追従性に優れていることだ。そしてそれを受け止めるボディ(シャシー)がしっかりしている。
さらにボディとサスペンションメンバー、そしてサスペンションアームといった連結部を含めた剛性が高いからボディとサスペンションの位相感が少なく、結果足の動きがよく感じられるのだ。
この連結部の剛性アップによりダイレクト感は上がりハンドリングに+となるが、乗り心地を悪化させる要因にもなる。しかしステップワゴンの乗り心地はとてもよく(サスペンションの動きがいいから)、また室内の静粛性も高い。
ミニバンはリアゲートの開口が大きく、スライドドアを採用するとそこら中の開口面積が増大する。
これはちょうど段ボール箱を開けた状態と同じで、グニャグニャと軟弱なボディとなりがちなのだ。これをしっかりと作り上げているところにベース車両となるステップワゴンの優秀さがある。
さらに全高が高く結果として重心も高くなる。これによってコーナリング時のロールへのモーメントが大きくなる。
このクラスのミニバンのほとんどがフロント:ストラット式/リア:トーションビーム式というサスペンション型式だ。
リアのトーションビーム式サスペンションはロール時にロールセンターの変化はない。しかしフロントのストラット式はロアアームのみでアッパーアームがない(仮想となる)。
このためロール時のロールセンター変化が大きく、つまりコーナーでのロール時に前後のロールセンターを結んだロール軸でフロントのロールモーメントの変化が大きくなる。
要するに前後のバランスが崩れやすい。だからバンプストッピングラバーなどで抑制してあまりロールさせたくない。なのにステップワゴンは前後ともにしっかり動かしてロールもする。しかも不安感がない。
この優秀なベースにモデューロXは車高を15mmローダウンさせ、バネレートなどサスペンション剛性をアップさせているのかというとそれほどでもない。
伸縮ともにストロークが短くなっているので大きなギャップを乗り越える際の強い入力にはハッキリと突き上げを感じるが、このことを捨ててS字などコーナリングからコーナリングへの切り返しの姿勢制御が早く、よりアクティブなステアリング操作に応えてくれる。
エアロは背高ゆえの空力の悪さをしっかり補うべくデザインされている。
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