なぜ軽トラックが続々と消えているのか? 日本が誇る自動車文化が衰退の危機

■一切の無駄を省いた傑作 しかし時代が求めるものは変わってきている

 軽トラックのユーザーとして、農作物を運ぶ農家の需要が挙げられるが、最近は農業に携わる人達の減少が著しい。農林水産省のデータによると、2010年の農業就業人口は260万6000人だったが、2019年には168万1000人に減った。従来型の農家が減ると、軽トラックの販売にも影響が生じる。

 また販売店からはユーザーニーズの変化も聞かれる。「軽トラックは、軽キャブオーバーバンに比べると、短距離の移動手段になる。最近は荷物の運搬だけでなく、営業活動などに使える合理的な軽商用車を求めるお客様が増えたので、多用途に適した軽キャブオーバーバンが好調に売れる」という。軽キャブオーバーバンは、ワゴン的な使い方も可能で融通が利くから人気だが、軽トラックは用途が限られ、農業就業人口の減少もあって売れ行きを下げてきた。

 このほか軽トラックを運転して感じる欠点は、軽キャブオーバーバンに比べると、長身のドライバーに対応しにくいことだ。ステアリングホイールやペダルと、シートとの間隔が狭い。長身のドライバーが運転するには、着座姿勢に無理が伴う。

 そこで居住空間の上側を後方に向けて拡大したスズキ「スーパーキャリイ」、ダイハツ「ハイゼットトラックジャンボ」なども用意されるが、価格が高まったり荷室の長さが制約を受けてしまう。

スズキ「スーパーキャリイ」。運転席後方にスペースが設けられている
スズキ「スーパーキャリイ」。運転席後方にスペースが設けられている
リクライニング機能が付いており、運転の途中で休憩を取る時も快適に使える。スーパーキャリイは運転席の背もたれを40度、助手席は24度まで倒せる

 以上のように、農業就業人口の減少を含めた軽トラックに対するニーズの変化に基づき、軽トラックの売れ行きは10年前に比べると約15%下がった。それでも需要の多いカテゴリーであることに変わりはない。

 例えばスズキ「キャリイ」は3つのメーカーにOEM車として供給される。その内訳は日産「NT100クリッパー(2019年度の届け出台数は9535台)」、マツダ「スクラムトラック(2473台)」、三菱「ミニキャブトラック(4024台)」となり、これらの台数をキャリイの5万9010台と合計すれば7万5042台だから、1カ月平均で6254台だ。

 この販売実績は、乗用車であればスズキ「ワゴンR」の7万8582台、月販平均で6549台と同程度になり、相当な人気車といえるだろう。今後景気の変動によって、軽トラックの売れ行きが再び盛り返す可能性もある。

 そして軽トラックは、一切のムダを省いているから、使ってみると下心のない合理的なクルマ造りに感心させられることが多い。読者の皆さんも、機会があったら運転してみてください。

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